研究課題/領域番号 |
20K10826
|
研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
佐藤 幸子 山形大学, 医学部, 教授 (30299789)
|
研究分担者 |
今田 志保 (佐藤志保) 山形大学, 医学部, 講師 (00512617)
遠藤 芳子 岩手保健医療大学, 看護学部, 教授 (20299788)
塩飽 仁 東北大学, 医学系研究科, 教授 (50250808)
種吉 啓子 東京都立大学, 人間健康科学研究科, 准教授 (80352053)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 子供 / 意思決定能力 / 構造分析 / 評価方法 |
研究実績の概要 |
研究の成果として、第1に前年度実施したインタビュー調査結果を分析し、その成果を日本小児看護学会学術集会において公表し、また、日本看護研究学会誌に投稿し原著論文として採択された。研究の内容は、小児CNS 8名を対象として,半構成的面接を実施した。データ分析は修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)に基づき実施した。その結果、小児CNSが子供の意思決定支援を行うにあたり,<支援の必要性の認知>から<子供の受け止めの理解>,そして<子供の状況を踏まえた説明・提案>を行い,最終的には子供が[自分で決めるのを待つ]ようにしていたが,<支援の必要性の認知>のためには<支援の判断の基準となる倫理観>が必要であり,また,子供にあった方法を調整するためには<支援方法を決めるための子供の見極め>が必要であることが示唆された。 第2に、インタビュー調査結果から子供の意思決定能力の構造を明確化し,看護実践のための子供の意思決定能力評価するためのチェックシートを作成し,デルファイ法によりその妥当性を検証するための一次調査を実施した。その結果、質問項目の適切性については中央値が4以上の項目は30項目中29項目であり,平均値が3.5以上は29項目であった。四分位範囲が1以下のものは17項目であった。適応可能性については中央値が4以上の項目は30項目中28項目であり,平均値が3.5以上は28項目であった。四分位範囲が1以下のものは19項目であった。自由記載の内容では,四分位範囲が1以下のもので,項目の表現が分かりにくいとの意見が多かった。自由記載の内容では,四分位範囲が1以下のもので,項目の表現が分かりにくいとの意見が多かったことから,基準を満たさなかった項目の表現等を修正することにより,合意率が高まることが考えられた。この結果を踏まえさらなる検討を行う必要性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の方法として、①倫理的調整の実践能力の高い小児専門看護師や臨床経験の豊富な小児科専門医を対象にインタビュー調査を行い,子供の意思決定能力の構造を明確化する(質的研究)。②明確化された子供の意思決定能力の構造を基に研究者間で検討し,評価の構成要素及び具体的指標を抽出する。③抽出した評価の構成要素及び指標の妥当性について,小児看護を実践する看護師や小児看護学研究教育者を対象に調査を行い(量的研究),子供の意思決定能力の評価方法の妥当性を検討する計画であった。しかし、妥当性の検証方法の精度を上げるために、全国の小児看護専門看護師を対象にデルファイ法により検証する方法に切り替えた。 その手順は①子供の意思決定能力のアセスメント用チェックシートの妥当性を質問する自記式アンケート調査を2回以上繰り返し行うことを対象者である全国の小児CNSに添付の説明同意文書により説明し,同意書にて同意を得る。②質問紙による第1次調査として先行研究から作成した「子供の意思決定能力評価チェックシート」等からなる質問紙を用いて,チェックシート項目の妥当性について調査を実施する。質問項目は,①対象者の属性と②子供の意思決定能力評価チェックシートの各項目に対する適切性と活用性(5段階の順位尺度)である。③チェック項目の妥当性についての質問紙調査結果を集計する。集計結果を踏まえてチェックシートの修正を行う。④第1回目の結果集計を提示し,第2回目の修正版チェックシートの各項目の妥当性について調査を実施する。 デルファイ法を実施するにあたり、子供の意思決定能力の評価表及び、その使い方のモデルを作成する必要があり、その作成に時間を要した。また、年度末までに2次調査を実施したが、その分析や評価方法の推敲がまだできておらず、やや遅れていると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
医療における子供の意思決定能力の評価のための指標の作成は,これまで明確化されてこなかった領域であるため,ミックスメソッドによる研究とした。まず,倫理的調整に関して実践能力の高い小児専門看護師の協力を得て,小児医療の実践に基づき質的に子供の意思決定能力の構造を分析し、その分析に基づき評価の指標を抽出し,量的にその妥当性を検討するものである。今後の研究の推進方策としては、まずデルファイ法の2次調査の結果を分析し、研究者間で子供の意思決定能力の評価方法の改善の必要の有無について検討する。大きな変更が必要ないという検討結果の場合は、2次調査で妥当性を検証した評価方法の軽微な修正のみで、学会等で公表する予定である。しかし、2次調査の結果から大きな修正が必要と判断した場合は3次調査の実施を計画する。3次調査に当たっては、令和5年度の9月ごろまでに実施できるように計画する。評価表の内容が確定でき次第、使用方法のマニュアル等を修正し、実用可能な完成版とし、学会等で公表する。 今後の課題として、大幅な修正が必要になった場合に、その修正等に時間を要し、令和5年度内に公表ができないことが考えられる。その対策として、研究者間で研究期間が終了しても公表等について継続的に検討し、令和6年度中には公表まで終了する予定である。 子供の意思決定能力が適正に評価されることにより,子供の意思が適切に反映された意思決定支援が可能となる。さらに,意思決定能力の発達への支援も可能となる。また,評価を適正に行うことにより,最終的な親の意思決定プロセスに大きく関与し,より子供の意思や最善の利益を考慮した親に対する意思決定支援 が可能となると考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、国内旅費や外国旅費を計上していたが、Web開催になったり、発表を次年度に繰り越したりしたために、その経費を使用しなかった。令和5年度は国内で学会や学術雑誌に公表予定であり、そのための旅費や諸経費が必要である。 また、今後の研究の推進方策としては、まずデルファイ法の2次調査の結果を分析し、研究者間で子供の意思決定能力の評価方法の改善の必要の有無について検討する。その際に使用する統計ソフトの更新が必要である。 さらに、成果物の印刷等に使用予定である。
|