研究課題/領域番号 |
20K10837
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研究機関 | 岩手県立大学 |
研究代表者 |
谷地 和加子 岩手県立大学, 看護学部, 講師 (00723058)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 乳がん / セクシュアル・ヘルス / ケアモデル |
研究実績の概要 |
内分泌療法を受けている乳がん女性へのセクシュアル・ヘルスケアのニーズや求められるケアの明確化につなげるため、文献検討を行った。その結果、内分泌療法を受けている乳がんを経験した女性は、月経や膣分膣物への影響や膣乾燥など生殖器症状によってセクシュアリティに関する変化や性生活への困難、パートナーとの関係性の変化、女性らしさの喪失感や外見の変化によってアイデンティティの揺らぎを経験し、それらのニーズは個々の特性があることが明らかとなった。しかし、内分泌療法を受けている乳がんの女性はセクシュアル・ヘルスに関する情報提供や相談を希望していても医療従事者との接点が減っていることや、相談できる専門職がいないなど困難な現状があった。看護の現状として、セクシュアリティに関する事柄には知識不足やためらいがあることでニーズに合わせた個別ケアを提供できていなく、セクシュアル・ヘルスケアは確立されていないことも明らかにできた。また、助産師による継続的ケアを経験した30~40歳代の乳がん女性5名に後方視的調査を行った。2019年に個別面接を実施した。Giorgiを参考として現象学的アプローチ法を用いて、“真実”としての経験の記述および意味の解釈を行った。その結果、助産師は女性の経験世界において、乳房や妊孕性を失い傷ついた身体である自分自身を語れる存在、経験を分かち合える存在だった。また自己の存在を肯定することにつながっていた。助産師の関わりは、内分泌療法によって影響を受けた月経や卵巣、帯下などの女性の身体を理解するのみならず、語りを通した共感的な関わり、ありのままに受けとめるような関わりが自分を大切に思う気持ちにつながり、自分の存在を肯定することにもつながると示唆された。以上より、専門職によるセクシュアル・ヘルスケアが必要であることを明らかにでき、理論的にセクシュアル・ヘルスケアモデルの素案を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内外の文献検討、助産師によるセクシュアル・ヘルスケアを受けた経験をもつ内分泌療法を受けている乳がん女性への後方的調査により、共感的・受容的な助産師の関わりによって、自分自身をありのままに語り、自分を大切に思う気持ちにつながり、自分の存在を肯定することにつながっていた。助産師が行う内分泌療法を受けている女性のセクシュアル・ヘルスケアは、身体の理解をするだけでなく、自分の存在を肯定できることにつながること示唆され、ケアモデルの素案を作成する成果となった。国内外の文献検討からも、対象者となる方へのセクシュアル・ヘルスケアの配慮する点やケア提供者の姿勢についても明らかにできた。また、ケアモデルの素案もある程度明確化することができたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、セクシュアル・ヘルスケアの内容を含めた、ケアモデルの素案について専門家から意見をもらいさらに精錬させていく。セクシュアル・ヘルスケアモデルを内分泌療法を受けている乳がんの女性4~5名程度に施行する。看護介入は個別に行うが、原則1か月~2か月に1回実施し、半年以上は関わりを継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会参加等の旅費の計上がないこと、及び専門家による打ち合わせを延期した関係で残額が発生した。2021年度の旅費、人件費、謝金に用いる。
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