研究課題/領域番号 |
20K10865
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研究機関 | 福岡県立大学 |
研究代表者 |
吉田 静 福岡県立大学, 看護学部, 講師 (30453236)
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研究分担者 |
佐藤 香代 国際医療福祉大学, 福岡看護学部, 教授 (80170736)
藤木 久美子 国際医療福祉大学, 福岡看護学部, 助教 (80632653)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 子ども / 喪失 / 父親 / ニーズ / 看護者 / ケア / 実態 / 比較 |
研究実績の概要 |
日本でのグリーフケア研究において、子どもの喪失した「父親」に着目した研究は非常に少ない。その理由として、男性は自分の感情を押さえることが望ましいといった日本独特の文化的規範が影響を与えていると考えられる。よって対象となることが少ない子どもを喪失した父親の体験と、父親が看護者に求めるケアを明らかにすることを目的として研究を行った。 研究方法は、無記名自記式質問紙を用いた横断研究とし、産科医療保障制度を導入している全国の病院、診療所に勤務する看護者を対象とした。調査内容は、①基本属性②母親へのケア経験内容③父親へのケア経験内容④夫婦へ関わる際の悩みと解決方法⑤勤務場所のサポート体制⑥看護者の学習状況である。分析方法は、SPSS Statictics ver.27を用いて行った。倫理上の配慮として、国際医療福祉大学倫理審査委員会の承認を得た。 産科医療保障制度を導入している全国の病院、診療所で、研究協力の得られた54施設に勤務する看護者444人を対象に質問紙を送付し、返送があった看護者の内、無回答を除いた232名を分析対象とした(回収率56.1%、有効回答率93.2%)。回答者は全員女性であり、平均年齢41.23±10.3歳、助産師181名、看護師50名、その他1名、平均経験年数17.09±10.3年であった。 子どもを亡くした夫婦へのケア30項目の内27項目は、父親へのケア提供が母親に比べて低く、差を認めた。その中でも全項目の中で「多職種連携」「情緒的ケア」項目は特に少なかった。職種による差は認められなかった。 看護者の父親へのケアに関する悩みは「父親へのサポートや関わりができない」「父親の感情表出を促しにくい」であった。職場でのケア方針は、67%が「方針なし」で、また看護者へのサポート体制は、54%が「サポート体制なし」であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究1である「子どもを喪失した夫婦のケアに携わった経験のある看護者への質問紙を用いた横断研究」は、コロナウイルスの流行により看護者の疲弊が危惧されたが、このような状況の中でも全国の医療機関、看護者の協力によって実施することができ、分析、考察を行い、ケアの現状や課題を見出すことができた。しかし研究計画当初よりも協力者数が少なく、全国調査ではあるが結果を一般化することは困難であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
看護者は、父親へのケア提供は母親よりも少なく、また父親に関わる時間の短さや異性である父親の感情表出を促しにくいことに悩んでいた。これは父親と同様であった。よって父親へのケアや支援の方法を再考する必要がある。看護者は父親に母親を支える役割を期待することが多いが、父親も子どもの喪失にショックを受け、悲しい思いを抱いている。飯野3)は「男性は、社会的なサポートが少なく、孤立しやすい。また、悩みを相談することが男性的でないと考えられており、相談しにくい」と述べており、父親への支援にはジェンダーにとらわれないことが重要である。さらに看護者が自らの無意識にある偏見の存在に気づき、専門職としてそれを自覚した上で、父親のケアを行う必要がある。一方で子どもを亡くした夫婦へのケア方針では約7割が「方針なし」、看護者へのサポート体制でも5割が「体制なし」であったことから、ケア方針の樹立や看護者への支援体制の整備が急務である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度研究成果を基として令和3~4年度研究成果報告会、ワークショップを実施する予定である(コロナウイルス感染状況によって変更の可能性有)。報告会やワークショップを開催するために共同研究者らと会議を行う必要があり、また報告会、ワークショップ案内の郵送費、資料印刷費、会場費等が生じる。また、研究成果を学会誌へ投稿する準備を進めており、投稿に関する費用が生じる。これらの必要経費として助成金を使用させていただきたいと考えている。
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