研究課題/領域番号 |
20K10889
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研究機関 | 長野県看護大学 |
研究代表者 |
中畑 千夏子 長野県看護大学, 看護学部, 講師 (60438174)
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研究分担者 |
坂田 憲昭 長野県看護大学, 看護学部, 教授 (70158921)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 新生児 / 常在細菌 / ブドウ球菌 |
研究実績の概要 |
周産期の母子約32組を対象とした。母親は分娩後の入院期間中と児の1か月検診時の計2回、新生児は生後1日目、5日目および1か月検診時の計3回において、鼻腔内の細菌を採取した。これにあたっては専用のスワブを用いた。その後、選択分離培地を用いてブドウ球菌属菌を 分離した後、同定検査によりStaphylococcus epidermidis:表皮ブドウ球菌とStaphylococcus aureus:黄色ブドウ球菌を分離した。対象の母子32組のうち、26組で母子ともに表皮ブドウ球菌を分離できた。したがって、今後はこの母子26組から分離された表皮ブドウ球菌を対象として、その異同を調べることにより、母子間における常在細菌の移行の有無を検討する予定である。一方で、黄色ブドウ球菌については、32組中4組で母子ともに保有していた。この4組から分離された黄色ブドウ球菌について、オキサシリンのMIC値を調べたところ、いずれも0.25~0.75μg/mlであり、MRSA(Methicillin resistant Staphylococcus aureus)の判定基準値である≧4μg/mlを下回っていた。母子から分離された黄色ブドウ球菌の異同については、今後、調べる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の計画は、まず周産期の母子約30組を対象とし、母親は分娩後の入院期間中と児の1か月検診時の計2回、新生児は生後1日目、5日目および1か月検診時の計3回において、鼻腔内の細菌を採取することであった。その後、選択分離培地を用いてブドウ球菌属菌を分離した後、同定検査により表皮ブドウ球菌を分離し、同時に、出産様式(自然分娩または帝王切開)、母親または新生児への抗菌薬投与の有無、母乳または人工乳摂取の状況等についても聞き取り調査を実施すると共に、退院後の育児状況の詳細や家族形態等の養育環境について、1か月検診時に情報収集することとした。実際には、表皮ブドウ球菌のみならず、黄色ブドウ球菌についても同定をし、黄色ブドウ球菌については、オキサシリンのMIC値を調べることによって、MRSAであるかどうかの検査も追加した。対象母子の状況については、新型コロナ感染症の全国的な流行拡大の影響もあり、対象施設への出入りが制限される中、十分な情報収集はできていないが、それ以外についてはおおむね順調に進展している者と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
すでに採取した試料について、MLVA法によりその同一性について調べ、母親と同じ表皮ブドウ球菌の菌株が新生児に移行または定着しているかどうかを明らかにする。これにより、母親の保有する常在細菌としての表皮ブドウ球菌が、どの時期に新生児へ移行および定着し、どの程度の期間維持されるかが明らかとなる。また、分離された表皮ブドウ球菌が同一株であった母児群と非同一株であった母児群間において比較することによって、新生児における母親由来の表皮ブドウ球菌獲得に関わる要因について明らかにする。さらには、NICU入室等により母子分離を余儀なくされた新生児に対して、どの時期に、どのような方法で母親由来の常在細菌を移行させることが可能か分析し、看護介入方法について検討する。具体的には、母親の皮膚に接触させ、母親の保有する常在細菌を意図的に付着させたタオルを用いたケアや、母親の母乳を浸した綿棒を児に吸わせる等の方法が実際に行われているが、いずれも有効性を実証した研究は存在しないことから、まずはそれらの方法の有効性について検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の流行により、実験室の利用に制限があり、実験内容が限定されたことや、協力施設への移動が制限されたことにより、交通費を使用しなかったことなどが影響したため。
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