産科医療機関に勤務している看護職(看護師・助産師)を対象に,子ども虐待発生予防に向けた看護実践の意識化プログラムを開発し,無作為化比較試験を実施した。承諾書の返信があった61名を無作為に介入群(31名),対照群(30名)に割り付けした。介入群の教育プログラムの内容は,2回のオンデマンド講義と2回のオンラインのグループワークとした。講義内容は,子ども虐待の現状や虐待発生予防のための看護実践などとした。両群に同じテキストを使用した。評価内容は,虐待発生予防に向けた看護実践自己評価尺度-産科病棟看護職版-(NES-CMP),子ども虐待発生予防に向けた看護実践の意識,モチベーション,自信とし,両群に同時期に計4回実施した。結果として,介入群31名の脱落は3名(脱落率9.7%)であり,分析対象は28名となった。対照群30名の脱落は4名(脱落率13.3%)であり,分析対象は26名となった。分析結果として,研究協力者の属性の比較では,介入群と対照群で有意差のある項目はなかった。プログラム実施後の評価では,NES-CMPの合計得点は,いずれの段階も介入群と対照群に有意な差はなかった。しかし,NES-CMPの各要因の分析結果では,プログラム実施直後に「信頼関係の構築」「育児支援必要度の査定」の得点が,対照群に比較し有意に増加した。また,子ども虐待発生予防に向けた看護実践の意識,モチベーション,自信が,対照群に比較し有意に増加した。 このことから,本研究のプログラムは,実施後にNES-CMPの要因「信頼関係の構築」,「育児支援必要度の査定」,子ども虐待発生予防に向けた看護実践の意識,モチベーション,自信を高めることに効果があったと考える。しかし,3か月後は低下傾向だったため,今後は意識を継続させるための勉強会や事例検討会など対策の検討が必要である。
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