研究課題/領域番号 |
20K10956
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
海地 伊沙名 千葉大学, 子どものこころの発達教育研究センター, 特任研究員 (40843785)
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研究分担者 |
清水 栄司 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (00292699)
浦尾 悠子 千葉大学, 子どものこころの発達教育研究センター, 特任講師 (40583860)
小柴 孝子 千葉大学, 子どものこころの発達教育研究センター, 特任研究員 (40816295)
佐藤 泰憲 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (90536723)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 認知行動療法 / 不安予防 / 台湾 / 学校 |
研究実績の概要 |
子どもの不安の問題に対する予防的介入の必要性が指摘される中、西洋諸国では認知行動療法に基づく不安の予防教育プログラム(以下;CBTプログラム)のエビデンスが蓄積され、学校現場で活用されている。しかし日本では、西洋で開発されたCBTプログラムの有効性が示されていない。そこで我々は、対人不安傾向が高い日本の子どもの社会文化的特徴を踏まえたCBTプログラム「勇者の旅」を開発し、大規模な効果検証研究を進めてきた。日本国内での有効性が示されていることから、同じく対人不安傾向が高いとされる東アジア地域の子どもにとっても「勇者の旅」は有用である可能性が高い。また、台湾ではCBTに関する研究論文が少なく、学校現場でCBTを用いて効果を検証した論文は見当たらない。そこで本研究は、日本の子どもの社会文化的特徴を踏まえて開発されたCBTプログラム「勇者の旅」の中国語版を作成し、台湾の学校現場にて効果を検証することを目指している。 現在までに、「勇者の旅」ワークブックと指導案の中国語版は完成している。また、台湾と日本の両国において、倫理審査をすでに通過している。さらに、台湾の学校現場で現役の教員として働いている台湾師範大学の学生主導で、「勇者の旅」プログラムが実践されることが決定しており、次年度より台湾の子どもたちに「勇者の旅」プログラムを提供する準備はおおむね整っている。台湾での有効性が確認されれば、日本や台湾国内だけではなく、将来的には中国本土や東アジア地域の子どもの、不安の問題の予防や早期介入に資することが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、台湾師範大学との共同研究として進めている。毎月1回のミーティングを開催し、次年度に「勇者の旅」プログラムを台湾の学校現場で実施する準備を進めている。 具体的には、台湾と日本の両国において、倫理審査を通過している。また、「勇者の旅」プログラムのワークブックと指導案の中国語への翻訳が完了している。さらに、評価指標として、スペンス児童不安尺度中国語版や台湾独自の尺度(児童幸福感尺度、児童生活適応感尺度)を用いることが決定している。また、台湾の学校現場で現役の教員として働いている台湾師範大学の学生主導で、「勇者の旅」プログラムが実践されることが決定しており、現在「勇者の旅」プログラムを受講する児童生徒(高学年)16~20名程度を募集している所である。 以上より、次年度から「勇者の旅」プログラムを台湾の学校現場で実施可能であると考え、本研究はおおむね順調に進んでいると考える。
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今後の研究の推進方策 |
【令和3年度:「勇者の旅」プログラムの実施】まず、研究協力校の高学年生16~20名を介入群・統制群に均等に振り分け、質問紙(①スペンス児童不安尺度中国語版 ②児童幸福感尺度 ③児童生活適応感尺度)による事前測定を行う。介入方法としては、「一般生涯探索活動」の時間に、介入群は週1回40分、計10回の「勇者の旅」プログラムを実施する。授業実践後と終了1か月後に、介入群・統制群に対し、質問紙(①~③)による事後測定を行う。また、質的データ(輔導記録、終了後に行うアンケート、担任教師に対する半構造化面接)も補足資料とする。
【令和4年度:前年度の結果を分析/次年度の効果検証研究の準備】前年度に行われた研究の結果をもとに、「勇者の旅」プログラム中国語版を、より台湾の学校現場で活用しやすくするための修正を行うとともに、次年度の効果検証研究へ向けた準備を進める。具体的には、台湾国内の複数の小学校にて授業実践ができるよう、台湾にて指導者養成研修会を実施するとともに、研究の実践協力校をリクルートする。
【令和5年度:台湾国内の複数の学校にてプログラムを実施、もしくはオンラインでのプログラムの実施】前年度にリクルートし、実践協力校に決定した小学校2~3校において、指導者養成研修会受講済みの現地小学校教員がプログラムを実施し、②の予備的研究と同様に、プログラム実施前後のSCASスコアを解析することで、介入効果を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
【次年度使用額が生じた理由】研究計画立案当初は、台湾への渡航や学会への参加の旅費として、研究費を用いる予定であった。しかし、新型コロナウイルスの影響で、台湾への渡航ができず、学会はオンラインのものが増え、旅費が不要となった。
【使用計画】次年度は、新型コロナウイルスの状況にもよるが、台湾への打ち合わせのための研究チームの渡航費や宿泊費(5名分)にあてたいと考えている。また、「勇者の旅」ワークブックや指導案の中国語版の印刷費、学会への参加費用、書籍代、本研究の事務的業務を担当する研究補助者1名への謝金にあてる予定である。
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