研究課題/領域番号 |
20K10957
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
谷口 好美 金沢大学, 保健学系, 准教授 (50280988)
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研究分担者 |
野上 睦美 金城大学, 看護学部, 講師 (20584353)
久世 淳子 日本福祉大学, 健康科学部, 教授 (50221221)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 共感疲労 / 高齢者ケア / 看護師 |
研究実績の概要 |
本研究では、病院・高齢者ケア施設に勤務する看護師に起こりやすいと考えられる共感疲労のプロセスを明らかにし,モデル化を行うことを目的としている。共感疲労とは,専門職に起こる心身の不調・行動障害であり、仕事に対する意欲の喪失や離職の原因となる。 2020年度は,高齢者ケアに特有な共感疲労が起こるプロセスを明らかにするために,文献検索データベース(CINAHL,PubMed,医学中央雑誌Web版)を使用し,「共感疲労」「看護師」「Compassion Fatigue」「Nurse」をキーワードに,過去10年間(2010年~2019年)で検索を行い,最終的に国内27件,国外33件を分析対象とした。分析方法は概念分析を参考に,文献の記述から共感疲労の定義,前提,帰結にあたる記述を抽出し,高齢者ケアへの適用を検討した。 看護師の共感疲労の文献検討の結果,分野としてはクリティカル・ケア8件,がん看護7件,精神看護6件,小児看護5件,高齢者ケア2件,訪問看護1件であった。看護師を対象とした横断調査の研究では,測定尺度ProQOL(Stamm,2012)を使用していた。共感疲労の前提としては「看護師側の他者に対する共感性」があること,定義としては患者が体験した病気・災害等の出来事を間接的に看護師が体験すること,代償受傷(VT),二次的トラウマティック・ストレス(ST),患者の援助に携わることにより自然に起こる行動や感情,帰結としては看護師側の身体的・心理的な疲労の蓄積・消耗,長期にわたり無自覚に受けることで身体的・心理的に多様な徴候が生じること,看護のパフォーマンス低下,離職に至るプロセスがあることが示唆された。現段階ではクリティカル・ケア,がん看護,精神看護の分野で行われることが多く,高齢者ケアに特化したものは少ないため,看護師の健康や離職の要因として今後の研究が必要であると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は,Stamm(2009)のProfessional QOL(ProQOL)の主要概念である共感満足,共感疲労,バーンアウトを基盤にしている。ProQOL尺度は看護師を対象にした日本語版(福森他,2018)が作成され,10項目の質問で共感疲労を測定することも可能となった。しかし,これらの尺度は抽象度が高く,汎用性が高い一方,高齢者ケアに適用できるか事前に検討する時間が予定よりも必要となった。また,本研究は病院・高齢者施設に研究協力を得る必要があり,事前の交渉を2021年度に延期したことから,やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度の文献検討の結果に基づいて,2021年度は高齢者ケアに特有な看護師の共感疲労が起こるプロセスの解明を行う。中部地方の病院・施設に研究依頼を行い,看護の臨床経験が3年以上の看護師を対象に,郵送法による自記式質問紙調査を行う。事前に看護師の共感疲労の文献検討の結果に基づき,高齢者の看護で心身に負担を感じた出来事,経過を問う項目を作成する。作成した質問項目について,研究分担者2名 とメール会議で検討を複数回行ったうえで質問紙を完成させ,データ収集・分析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)COVID-19感染拡大防止で学術集会がオンライン開催となり,旅費が不要となった。 (使用計画)2021年度分と合わせて病院・高齢者ケア施設での調査を実施するための費用にあてる予定である。
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