研究実績の概要 |
今年度,我々は肯定的感情とレジリエンスは正の相関を示すという多くの研究結果とレジリエンスを後天的に高める(向上させる)ことが可能であるという先行研究を踏まえ,高齢者施設職員のストレス低減のためのレジリエンストレーニングの有効性を実証するために,高齢者介護施設職員を対象にヨーガとマインドフルネス瞑想をレジリエンストレーニングとして採用した.ヨーガ群とマインドフルネス瞑想群とコントロール群を無作為に3群に分け,効果を比較した.効果の指標には, Maslach Burnout Inventory : MBIを基に開発された日本語版バーンアウト尺度とConnor-Davidson Resilience Scale日本語版を用いた.また,生理的指標として唾液中のα-アミラーゼ値(NIPRO:T-110-N)を測定した.ヨーガ群とマインドフルネス瞑想群の介入には,それぞれ資格をもつインストラクターが毎週60分1回のセッションを6週間実施した.途中,13名がドロップアウトしたため最終的に47名のデータを分析した.その結果,レジリエンストレーニング後,日本語版バーンアウト尺度の下位項目である情緒的消耗感,達成度の後退がそれぞれ有意に低下していた(F [2, 39] = 4.57, p = .008,F [2, 39] = 3.52, p < .02).また,ストレスの生理的指標として用いた唾液中のα-アミラーゼ値は介入前時点では3群間に有意差はなかった(F [8, 76] = 0.77, p = ns) が,介入後は有意に低下していた (F [2, 39] = 6.95, p = .002).すなわち,今回のレジリエンストレーニングプログラムは高齢者施設職員のストレスの低減に一定の効果があったと言える.
|