研究課題/領域番号 |
20K11025
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研究機関 | 長野県看護大学 |
研究代表者 |
安田 貴恵子 長野県看護大学, 看護学部, 教授 (20220147)
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研究分担者 |
田村 須賀子 富山大学, 学術研究部医学系, 教授 (50262514)
小野塚 元子 長野県看護大学, 看護学部, 講師 (30449508)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 認知症地域ケア / 市町村のマネジメント機能 / 多職種協働 / 多部門連携 / アドボカシー |
研究実績の概要 |
本研究は、軽度認知症者と家族が安心して生活できる地域ケア体制づくりにおいて市町村が発揮すべきマネジメント機能を探求する。認知症という疾患の特性を踏まえた要支援者への早期支援につなげるアプロ―チ、ならびに軽度認知症者と家族のためのケア資源の創出と組織化について、企画運営組織(市町村)とサービス提供組織が異なる体制という条件下で求められるマネジメントの方法論を明らかにしていきたい。 初年度の取り組みとして、先行して行った研究課題の成果を踏まえて、第2段階の調査内容を検討するために、フィールドワークと文献検討を行った。フィールドワークでは、県による地域包括ケア推進に向けた市町村支援事業の支援者として参画した。市町村支援に継続して参加したことによって、直営地域包括支援センター(以下、地域包括)職員の抱える困難の内容とその解決方法のプロセスを体験することができた。また、地域包括は多岐にわたる事業を担っていることから、その事業の実施に追われ、地域がどうあったらよいかや住民の願いを反映した地域の姿を考える余裕がないという切実な状況にある。この現状は、他県の地域包括にも共通すると考えられる。これらのフィールドワークを通して、個々の事業単独ではなく複数の事業や施策全体を俯瞰することが重要である。 文献検討では、認知症、多部門連携、多職種連携が含まれる研究報告について、研究方法や内容を検討した。認知症者の支援に関連する23件の和文献についてみると、事例報告では在宅での看取り、介護者の認知症発症による家族介護力低下に対する多職種連携、若年性認知症診断後の本人・家族支援などであった。量的調査によるものでは、地域包括職員、薬局薬剤師、社会福祉協議会を調査対象とした連携の実態を横断的に調べたものであった。文献検討を通して、個別ニーズに応じて連携がとられた実績は多数報告されていることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では初年度において、先行して行った研究課題の成果をもとに、認知症2次予防活動の実態調査(質問紙調査)を行うことにしていた。しかし、新型コロナウイルス感染症の蔓延により、研究代表者は所属大学の感染対策を検討する主要メンバーとして大学全体の対策の検討に従事したこと、さらに担当授業科目・実習科目のオンラインへの変更による業務量が増加したこと、コロナ禍での大学院生の研究活動に関する相談に対応したこと等の影響をうけ、本研究課題のための時間確保は大変困難を極めた。予定していた質問紙調査は行うことができなかった。 そのような状況において、市町村の地域包括ケア体制づくりを支援する県事業に令和元年度から関わっていたため、そのつながりを活かして継続的な市町村支援に参画することができた。フィールドワークができたことによって、これまで行ってきたインタビュー調査では把握しにくい具体的な状況を知ることができ、本研究課題で探求する事象の特質を改めて認識する貴重な機会となった。 また、認知症に関する施策は日々アップデートされているので、老人保健事業推進費等補助金による研究報告書や認知症初期集中支援チーム員研修の内容、認知症地域支援推進員研修会等の内容について情報収集を行い、動向を把握した。 以上より、フィールドワークや文献検討、webを活用した情報収集を行い研究課題に含まれる事象の整理を行うことができたが、当初に予定していた質問紙調査を行うことができなかったため、「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に実施する計画にしていた質問紙調査を実施する。認知症総合支援事業に焦点あて市町村の調整管理の実態を明らかにすることを目的とし、これまでの研究成果を活用して市町村が行う調整管理の内容を調査項目として設定する。調査内容・項目の検討では、研究チームメンバーによる研究会議をwebにて行う。質問紙の送付ならびに回収は本年度中に行うように計画し、令和4年度に開催される公衆衛生看護関係学会の学術集会で調査結果の一部を公表できるよう分析に取り組む。このような計画とするが、新型コロナウイルス感染症の蔓延状況は、現時点では収束の見通しが持てない状況であり、市町村の保健福祉分野の職員は、コロナ禍での支援活動の継続やサービス提供機関との調整などに対応していることやワクチン接種業務への従事が加わっていることも予測できる。そのため、調査票配布時期、調査対象とする自治体等については、新型コロナウイルス感染症対策の状況を考慮して判断することとする。 これまで継続して取り組んでいる地域包括ケア体制づくりのための市町村支援にも引き続き参画する。これについては実施主体の長野県の担当者との話し合いの機会を持ち、市町村支援の方法やあり方について検討する。 本研究は、地域看護/公衆衛生看護を学問的基盤とするが、実務の場では多様な職種が従事している現状にある。このことに留意して、学術集会での成果公表の際には、多様な立場からの意見を得られるようにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度は、新型コロナウイルス感染症の蔓延防止のために、移動制限があることから研究会議を対面で行うことができなかった。そのため、情報共有や検討は、メールやweb会議システムを活用して行ったことから、旅費を執行することがなかった。また、当初予定していた質問紙調査を行うことができなかったために、印刷費、送付・回収のための送料、データ入力作業の費用等を使用することがなかった。質問紙調査は令和3年度に実施するので、その経費を次年度の使用額としていく。 対面で行う研究チーム会議に変えて、web会議システムを使って行うこととするが、検討作業を効率的に行うためのクラウドの使用と保守管理、ソフトウエア等のICTツールの購入および使用に係る費用を必要とする。 加えて、認知症ケア関連の文献の収集、マネジメントやガバナンスの関連書籍の入手、研究チームメンバー自身のマネジメントスキルの習得に係る研修等の費用を必要とする。
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