最終年度は、量的調査データの解析と結果の成果発表を行った。初年度に実施したトランスジェンダーにおける医療アクセス実態調査の結果について最終解析を行った。トランスジェンダー当事者が必要な医療受診をあきらめた経験、受診時に嫌な経験をしたことを目的変数とし、トランスジェンダーに必要なホルモン療法等の中断経験、戸籍上の性変更、手術経験を独立変数とし関連を検討した。 診察をためらったことがある経験は、治療を中断した経験があることと正の関連がみられ、調整済みオッズ比(95%CI)は1.934(1.141~3.278)であった。また、受診時の嫌な経験があることは、戸籍上の性別の変更の有無、手術治療の経験の有無、治療を中断した経験の有無と関連が見られた。戸籍上の性別に関しては、戸籍の変更をしていないものの方が、変更をしているものより嫌な経験をしており、調整済みオッズ比(95%CI)は1.477(0.937~2.327) であった。また、手術経験がないことは受診時の嫌な経験との正の関連がみられ、調整済みオッズ比(95%CI)は1.525(1.011~2.299)であった。トランスジェンダーに必要なホルモン治療等の必要な治療を中断した経験があることも、受診時に嫌な経験をしたことと関連がみられ、調整済みオッズ比(95%CI)は2.083(1.223~3.546)であった。 本研究の成果については、愛知県内のK市における中学校に勤務する教員、養護教諭への講習会、T市の保健師、養護教諭、保健医療従事者を対象とする講習会、HIV予防に従事するコミュニティヘルスワーカーが集まる全国会議において公表を行った。
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