研究課題/領域番号 |
20K11042
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
小林 千世 信州大学, 学術研究院保健学系, 准教授 (30262736)
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研究分担者 |
上原 文恵 信州大学, 学術研究院保健学系, 助教 (00771065)
山口 大輔 信州大学, 学術研究院保健学系, 助教 (60735182)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 回想 / 高齢者 / 前頭葉代謝解析 / 知的機能 / 自律神経機能 / 心理状態 |
研究実績の概要 |
高齢者の認知機能低下予防に利用される回想は、回想中の右前頭葉の酸素化ヘモグロビン濃度を高め、両前頭葉の脱酸素化ヘモグロビン濃度を低下させることが明らかになった。さらに高齢者参加者の気分状態が回想後に有意な改善を認め、子供のころのことを懐かしく思い出す回想法に基づく介入は、前頭葉を活性化し、認知的に障害のない高齢者参加者の気分状態および健康知覚にポジティブな感情を誘発することが明らかになった。しかし、回想を繰り返すことによって効果があるとされる認知機能への効果や回想する環境条件が変化した場合の回想効果については課題が多い。 そこで本研究は、①高齢者の認知機能(知的能力)に与える回想の効果、②高齢者が回想する条件を変更した場合の回想の効果を脳活動、気分、自律神経機能、知的能力を用いて明らかにすることを目的とした。 研究方法としては、知的機能の指標として数的処理及び言語理解を用いて回想の効果を評価する。回想環境条件は安静時及び緊張下での回想条件を設定し、脳代謝、自律神経機能、気分尺度を指標として回想の効果を測定する。前頭葉の脳活動は、近赤外分光法を用いて前頭葉の血流の酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンを測定し、自律神経機能は心拍数とR-R間隔を測定し周波数解析によってLF・HF・LF/HFを算出。心理状態は、気分状態(Visual analog scale)、自尊感情、POMSを用いて評価する。 高齢者の知的機能を測定する指標や回想環境の条件設定方法について検討した結果をもとに、コロナ禍での高齢者を対象とした脳活動、自律神経機能、心理状態のデータ収集方法や参加者募集方法など研究計画を検討したが、令和4年度は新型コロナ感染症患者の増加に伴い高齢である研究協力者を募集する機会を得ることができなかった。 参加者の募集方法を検討し、2023年は倫理審査終了後にデータ収集を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
Covid-19の感染拡大が続き、基礎疾患を持つ高齢者が活動を自粛したり、イベント等が減少して外出やイベント等への参加が少ない状況が続いたことから、研究協力者を募集する機会がなく、協力者の募集活動を十分に行うことができなかったために遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
参加者の募集計画の見通しを立て倫理審査申請を進め、データ収集を進める予定である。Covid-19の感染拡大傾向は変化してきており、高齢者のワクチン接種が進んでいる状況下で、参加者が不安を感じることなく参加できるような環境つくり及びデータ収集メンバーの確保を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症が拡大する中、高齢の研究参加者を募集してデータ―収集することが困難となったため、データ収集に必要な人件費や感染防御を考慮したデータ収集環境整備費、参加者への謝礼等に予定した費用が次年度以降に繰り越しとなった。データ収集の遅れに伴い学会等での成果発表や論文作成に係る費用の使用も遅延した。 R5年度8月以降のデータ収集に向けて参加者募集に対応する人員を確保するとともに、感染防止対策を考慮してデータ収集スケジュールを調整し、当初の計画よりも人員を増員してデータ収集を行う。その際、参加者の不安を軽減するために感染対策用の消耗品を準備する。 平行してデータを安全に保管するための保存メディアの準備、データの分析を行い、学会等での成果報告を進める計画である。
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