研究課題/領域番号 |
20K11043
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
浜田 紀宏 鳥取大学, 医学部, 准教授 (30362883)
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研究分担者 |
尾崎 米厚 鳥取大学, 医学部, 教授 (00224212)
谷口 晋一 鳥取大学, 医学部, 教授 (30304207)
久留 一郎 鳥取大学, 医学部, 教授 (60211504)
井上 和興 鳥取大学, 医学部, 講師 (60739085)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | KDBデータベース / 介護予防 / 健康診断 / レセプト / 人工知能 |
研究実績の概要 |
昨年秋ごろより、研究分担者およびKDBデータベースを管理している国保連合会と度々ミーティングを行い、横断研究として①「非糖尿病患者における腎障害(腎機能低下ないしは尿蛋白)と関連する要因や疾患は何か」、②「ロコモティブシンドロームおよびサルコペニアと関連する疾患を有する集団において、何が高い要介護度と関連するか」、③「脳卒中入院患者においてその病型別に発症と関連する背景疾患は何か」を計画した。国保連合会と幾度かやりとりをしながら、最終的に、匿名化された健診受診者の健康診断・レセプト・介護と突合され、統計解析に的確な形式のデータセットを入手し、SPSSVer.27を用いた解析が可能となった。 現時点では、尿蛋白は腎機能低下、高血圧、肥満、喫煙と正相関し、一般住民に対する腎障害への取り組みが要医療・要介護状態の予防に寄与する可能性が示唆された。ロコモティブシンドロームの原因として大腿骨骨折と骨粗鬆症は高い要介護度(要介護3以上)になりやすく、さらに大腿骨骨折をした集団にCOPD男性、糖尿病患者が高率に含まれることも明らかとなった。脳卒中に関しては、鳥取県では患者数が横ばいとなっており、生活習慣病や心腎疾患の罹患者が多かった。以上のように、要医療、要介護状態の鍵を握るのは、糖尿病、心・腎疾患、喫煙と関連した疾患など、ある程度重点対策を行うべき集団が徐々に特定できている。 今後は、ある時点を起点とした後ろ向き観察研究に進んでいきたいが、後述の障壁に対処する必要があると考え、以下のような計画を立案しつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
標記「研究実績の概要」のように、横断研究の形では概ね実施可能な状況にあるが、観察研究としては以下の点で立案から実施までのプロセスに難渋している。 コロナ禍で、対面による研究打ち合わせの機会が限定された。ウェブを用いて補完したが、十分ではなかった。 数年間の介護、医療、健診データを連結したものを分析に用いる予定であるが、介護データが2~3年しか経年的に追えないこと、薬剤レセプトが個別商品名で登録されているためにデータの取り出しに難渋している点が障壁となっていた。さらに、人工知能を用いた、医療介護のハイリスク者の特定に関しても計画しようとしているが、時間の関係で十分に取り組んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
まず、国保連合会から適切なデータセットを拝受できるために、研究の推進を加速していくことが必要である。国保連は、ビッグデータの使用が県民の健康増進および医療費削減につながることを期待している反面、保険者の個人情報使用目的に関する説明責任も有している。そのために、研究者は最大限の英知を結集し、短い年数で限られた情報であっても研究課題解決に対して尽力していく。それらの結果と研究限界を国保連と議論し、どのような追加情報が必要かを国保連に認識いただければ、保険者情報の突合年数の延長や、研究者が取り扱い可能な項目の拡大などが実現できると考えている。 2点目としては、これは言うまでもないが、適切な研究計画を他者の支援を得て構築し、速やかに実施することである。そのために、以下のような共同研究者やコンサルタントをお招きし、月1回などの定期的なオンラインやメールでのミーティングを実施する。こうして、期限を区切って成果物が速やかに文献化されるように適切に計画、実施する。 上記と関連して、3点目としては、ビッグデータを扱う専門家とのコラボレーションである。幸い、当学工学部に所属する人工知能(AI)の専門家に本研究の進め方に関してご意見をいただいており、可能となれば分担研究者に加入いただけないか打診を始めたところである。また、当該領域で全国的に活躍されている方と密に交流したりするため、先日は日本医療経営学会や医療経済研究機構に賛助会員として加入した。両会議への参加により、保健・医療・介護を突合したビックデータに基づく国内のすぐれた研究手法やその成果からいろいろと学んでいきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度は、コロナ禍により研究にかかるミーティングや関連学会参加がすべてオンラインとなり、旅費の支弁が不要となった。また、扱うデータ量が少なかったために、分析など研究を補佐する人材の一時雇用も不要となった。こうして、標記が次年度使用額として繰り越しとなった。コロナ禍は令和3年度中も継続することが濃厚であるため、旅費としての使用額は少額である見込みである。 従って、令和3年度では、旅費以外に①ミーティング参加の頻度を増やして支弁の対象を研究協力者などに広げること、②pythonなど人工知能のプログラミング言語を扱っているソフトウェアの購入、③大型ディスプレイなどデータ編集と連動して使用する周辺機器類、④データセットの作成・整備にかかる人材の雇用を現在のところ計画している。
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