本研究は、病棟看護師による退院後の見通しをもった高齢者の身体的・心理的・社会的背景を踏まえた食支援尺度を開発することを目的とした。2023年度は、2022年度に尺度開発に向けた本調査を実施して尺度の信頼性・妥当性を検討した結果について英語論文を作成した。そして国際学術誌へ論文投稿し、国内外へ研究結果を公表した。 また、本調査の結果から尺度得点を属性ごとに比較し、病棟看護師の自己評価に影響する要因を検討した。その結果、NST活動経験、他分野(地域包括ケア病棟、回復期リハ病棟、療養病棟、訪問看護)の勤務経験、看護師経験年数では尺度全体得点および各下位尺度得点において有意差はなかった。病棟内における栄養管理に関する勉強会・研修会参加経験では、尺度全体得点および各下位尺度得点すべてにおいて、勉強会・研修会参加ありの方が有意に得点が高かった。病院内における栄養管理に関する勉強会・研修会参加経験では、尺度全体得点と下位尺度「健康的な食行動のアセスメント」において勉強会・研修会参加経験者の方が有意に得点が高かった。病院外における栄養管理に関する勉強会・研修会参加経験の比較では有意差はなかった。過去3か月間の食事指導経験回数について、0回、1~4回、5回以上で比較したところ、尺度全体得点および各下位尺度得点において5回以上食事指導を経験した方が有意に得点が高かった。 病棟内で栄養管理に関する勉強会はNSTリンクナースを中心に開催していることが考えられる。そのため、NST看護師は所属病棟の特徴に合わせた栄養管理に関する看護実践を指導できる立場にある、NSTリンクナースの役割や教育体制を構築する必要性があると考えられる。さらに、看護師は食事指導に十分な時間を確保できないという報告があり、多職種と協働しながら食事指導をする必要性がある。
|