研究課題
認知機能が低下すると医療に対する意思決定能力(医療同意能力)も低下すると考えられている一方で、認知機能が低下していたとしても必ずしも医療同意能力が障害されているとは言えない。この矛盾した状況の理解には、治療ごとに必要となる医療同意能力の程度が異なるためと説明されている。例えば侵襲性が低く、発症や再発予防効果が高いような治療、すなわちリスクが低くベネフィットが高い治療であれば、高度な医療同意能力は必要とされない。しかし医療が各段に進歩している現代では、高齢者であっても治療の選択肢が増えているため、高齢者や認知機能が低下した者でも、難解な治療内容を理解して、自分に対するリスクとベネフィットを比較し、意思決定しなければならない。本研究では、大動脈弁狭窄症の治療として経カテーテル的大動脈弁植込み術(TAVI)のための検査入院をした高齢者の診療録を後方視的に調査した。治療選択時の患者と医師や看護師との問答の記録から、Appelbaum & Grisso(1995)が提唱した理解,認識,論理的思考,選択の表明の4つの機能的能力が中核を成す4つの能力モデルに基づき医療同意能力の有無を判定し、医療同意能力と患者の認知機能との関係を調べたところ、侵襲性はあるがベネフィットが比較的高いTAVIにおいては、軽度認知障害(MCI)(MMSE24点~27点の範囲)が疑われれる認知機能の低下が軽度の高齢者においては医療同意能力の有無にばらつきがあった。またMMSEが23点以下の認知症を疑う高齢者であっても医療同意能力があると判断される場合もあった。以上の結果からTAVIに関しては認知機能障害の段階から意思決定の支援が必要と考えられる。本研究では、意思決定支援の方法に関して現場の看護師とディスカッションや聞き取りのプロセスを共有することにより、診療録への記録内容の変化を捉えることができた。
2: おおむね順調に進展している
データクリーニングと解析がおおむね完了し、その解析結果の論文作成中である。
意思決定支援のために作成した患者や家族向けの資料は、臨床上ディシジョンエイドとして有用である。今後は意思決定ガイドの国際基準(IPDAS checklist)を満たしたガイドブックとして作成し、掲載を目指す。
COVID-19パンデミックのため、医療関係者に対するヒアリング等、また成果の国際発表ができなかった。本年度にヒアリングと分析、また国際発表を計画している。
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すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)
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