研究課題/領域番号 |
20K11091
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研究機関 | 畿央大学 |
研究代表者 |
乾 富士男 畿央大学, 健康科学部, 准教授 (80469551)
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研究分担者 |
松本 大輔 畿央大学, 健康科学部, 准教授 (20511554)
冨澤 理恵 大阪大学, 医学系研究科, 招へい教員 (20584551)
本多 智佳 滋賀医科大学, 医学部, 客員准教授 (40625498)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 行動遺伝学 / 睡眠時間 / 双生児研究法 |
研究実績の概要 |
本年度は,昨年度に実施した質問紙調査を含めた2008年から2020年までの12年間の追跡データを解析した。特に,アルコール摂取量と睡眠時間の関連,心理尺度(自己効力感)と身体症状(疲労症状)の遺伝的関連,糖尿病多遺伝子リスクスコア(PRS)と睡眠時間の関連,を多面的に解析し,日本双生児研究学会第36回学術講演会(2022年1月)で報告した。これらの解析では,本研究の主題である睡眠に関連していると思われる要因(飲酒,喫煙と睡眠時間との関連,うつ症状と睡眠時間との関連)の遺伝的環境的解析を行った。現在のところ,主題である睡眠時間減少のメカニズムを明確に説明できる結果は得られていない。また,睡眠時間を減少させる要因(飲酒,喫煙,糖尿病,うつ症状)との遺伝相関は確認されていない。 その原因として,サンプル数の関係で統計学的検出力が不足している可能性もあるが,逆に考えれば大きな影響は存在しないともいえる。 睡眠時間そのものの遺伝的な影響(遺伝率)は計算された。このことは諸外国の先行研究と一致している。しかし,遺伝率そのものは先行研究に比べて小さく,わが国特有の環境要因が大きく影響していることが考えられる。 今年度は,計画段階では想定していなかったが,過去に蓄積されていたSNPデータを用いて,糖尿病のPolygenic Risk Score(PRS)を推計した。睡眠時間と糖尿病との関連は,複雑で,関連や因果関係を説明することは簡単ではないが,睡眠時間と糖尿病PRSには関連は認められなかった。しかし,日本人の参照データ(GWASの結果など)が少なく,睡眠のPRSそのものは計算できていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
慶應義塾大学のデータおよびハンガリーセンメルワイス大学のデータの二次利用申請については,予定していた打ち合わせのための出張が,COVID-19パンデミックの影響で実現できていない。 また,ヘルシンキ大学との打ち合わせについても,渡航できないために十分に行えていない状況である。 環境要因の特定には,国際比較が強力な解決策を提供してくれると期待しているが,既存データの利用並びに新規データ収集に協力してもらうためには,現地に行っての打ち合わせ,交渉が必要不可欠である。 また国内のでデータ解析からは,環境要因の影響は示唆されているが,個人の環境の要因が大きく,特定には現在収集されていない項目を含むデータの新規収集が必要であると推測されている。 以上のことより,計画当初の予定とは異なる方法でのデータ収集,解析に計画を変更せざるを得ず,計画にやや遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
国際比較のためのデータ収集,打ち合わせ,解析が進んでいないことについては,今年度の渡航に期待したい。しかし,研究協力者側もパンデミックの影響で当初の予定通りの協力が難しい状況もあるため,より簡便な方法で,目的を達成できるような国際比較の方法を検討する。 その一つの方法に,PRSを用いるものがある。一卵性双生児の場合,PRSは同じであるはずなので,表現型に差異が見られた場合,環境要因を特定しやすい。研究計画にある古典的双生児研究法でも理論としては同じであるが,遺伝的背景を限定していない分,統計学的検出力が下がる(すなわち,人数が多く必要)。 この点を考慮し,PRSを用いた解析を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外出張が全くできていないこと。国際学会の開催がオンラインとなり,参加費および旅費が大幅に少ない金額であったこと。国内の出張も大幅に少なくなっており,新規のデータ収集もできなかったこと。 次年度の研究計画に示したとおり,国際比較の解析に代わる方法として,PRSを使用した解析を新たに加えることとする。繰越金は,PRSの解析に必要な知識の習得,協力者の確保,打ち合わせの旅費等に充てることとする。
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