研究課題/領域番号 |
20K11093
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研究機関 | 釧路工業高等専門学校 |
研究代表者 |
中島 陽子 釧路工業高等専門学校, 創造工学科, 准教授 (20217730)
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研究分担者 |
本間 宏利 釧路工業高等専門学校, 創造工学科, 教授 (80249721)
プタシンスキ ミハウ 北見工業大学, 工学部, 准教授 (60711504)
桝井 文人 北見工業大学, 工学部, 教授 (80324549)
秋葉 友良 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00356346)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 介護支援 / 介護事例データベース / 機械学習 / 介護コミュニケーション / 認知症 / BPSD |
研究実績の概要 |
本研究は,認知症グループホームが所有する介護資料を利用して,介護事例データベース(DB)を構築し,自然言語処理や機械学習などの人工知能技術を応用し,様々な事例に対し効果的な介護対応手段を提示する介護コミュニケーション支援システムの開発に挑戦する.認知症グループホームの介護業務の円滑化,業務負担の軽減化,および,介護職員の離職率の低減など,現状の問題解決に貢献する.認知症GHで作成・保管が義務付けられている「介護日報」,「介護計画書」,「施設利用者個人属性(年齢,性別,職業,趣味,服用薬)」,「連携支援医師と管理者間での介護方針打合わせ資料」をまとめて利用者介護データと定義し,これらを本システムの機械学習モデル構築のための入力データとする.最初に,入力された利用者介護データから我々が事前研究で構築した介護用語辞書を利用して,介護事例に関する文章のみを抽出し,続いて形態素解析器と構文解析器によって文章の要約と文体整形を行う.このようにして利用者介護データから利用者別介護事例データを獲得する.次に獲得した利用者別介護事例データを,介護対応が適切であった適切介護事例と対応が不適切であった不適介護事例の集合に自動分類する.分類された介護事例は介護事例データベースに蓄積され,これらを機械学習のためのラーニングデータとして利用する.介護事例DBにこれらの機械学習ツールを適用させ,介護方法提示モデルを生成する.介護職員がこのモデルに対して,施設利用者の個人属性,健康状態,問題行動,困り事などの事例を入力することで,その施設利用者に適切と思われる介護コミュニケーション手法が提示される.また,これらの提示案の実践成果を新たに介護事例DBへフィードバックすることで,システムの更なる高精度化を実現する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,介護事例データベースの構築,介護用語辞書の構築,および介護方法提示モデルのための困りごとの分類を行った. 介護事例データベースについては,協力介護施設から提供いただいた施設利用者ごとのフェイスシート,サービス計画書およびモニタリング記録表,また,施設ミーティング議事録及び医師と事業主のミーティング音声記録のデータを用い必要項目を洗い出し,人手により介護事例データベースの基礎を構築した.介護事例データベースの項目は,周辺症状項目として1. 個人ID 2. 資料作成日, 3. 周辺症状,4. 周辺症状コード,5. 改善目標,6. 改善目標コード,7. 対処行為,8. 対処コード,9. 改善度,10.キーワードを項目とした.さらに,個人属性データ項目として,1. 個人ID 2. 生年, 3. 性別,4. 以前の職業,5. 趣味,6. 要介護区分,7. 備考の7項目とした.周辺症状や改善目標,対処行為は文章から人手により要約した文を介護事例データベースに蓄積している. 介護用語辞書は施設から提供いただいた文書から,介護に特徴的な単語を抽出し,表記揺れや言い換え単語に対して同義の単語の整備を行ない120単語を収録した. 認知症罹患者において行動・心理症状(BPSD: Behavoral and psychological symptoms of dementia)の分類がされている.周辺症状を系統化するためにBPSD基づき周辺症状分類モデルの生成と評価を行った.周辺症状データ数169,9クラスで3種類(サポートベクターマシン,ランダムフォレスト,BERT)の機械学習手法で実験を行なったところ,最も高い分類精度で0.584であった.精度の改善が必要であり,そのためには文書からの困りごとと対処方法の自動抽出を実現しデータ量を増やす必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の研究で明らかになった課題である介護記録から周辺症状と対処方法を自動的に抽出するための自動要約を実現する.また,周辺症状分類モデルの精度改善を行う.介護事例データベースのデータを増やすために協力施設の開拓やアンケート形式によるデータ収集を行う.機械学習機構を実現し,「個人属性データ」と「困りごと・悩み要因」を入力することで,適切と思われる介護コミュニケーション方法を提示する介護方法提示モデルを構築する.機械学習エンジンの学習精度向上には,適切な素性(学習に必要なデータ項目)や各種パラメータの設定や最適化が重要であり,最適エンジンの実現のため性能検証を幾度も実施する.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス感染渦により,分担者との打ち合わせをメールまたオンラインで実施したこと,また,国内および国際学会が延期,またはオンラインで実施されたため学会参加費,出張費の拠出がなかったため.次年度は,国内および国際学会に投稿し参加,また,研究成果を国内および海外学術論文誌への投稿を予定している.
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