研究課題/領域番号 |
20K11101
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
畠中 雄平 琉球大学, 人文社会学部, 教授 (60649846)
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研究分担者 |
池添 志乃 高知県立大学, 看護学部, 教授 (20347652)
蜂屋 孝太郎 帝京平成大学, 人文社会学部, 准教授 (40540381)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 神経発達障害 / 運動発達の問題 / ベイジアンネットワークモデル |
研究実績の概要 |
4ヶ月、10ヶ月、1歳6ヶ月健診の運動発達の問題が将来の神経発達障害(NDD)の診断を予測するか、について、ベイジアンネットワークモデル(BN)を用いて検討した。 具体的には以下の手順の通りに実施した。健診結果をエビデンスとして項目ノードに与えた時のNDD診断陽性の事後確率をBNにより求め、ある事後確率をカットオフ値とした時の感度と特異度を求めてROC曲線を描き、曲線下面積から診断予測精度を評価した。また、Youden Index(感度+特異度-1)が最大になる事後確率(最適カットオフ値)を求め、そこにおける感度、特異度、陽性的中率(PPV)、陰性的中率(NPV)、及びUtility Index(UI)を求めた。加えて、事後確率が最適カットオフ値を超えるような運動発達の問題の組み合わせについて検討した。 AUCは0.735 (95%CI:0.648-0.821)であった。最適カットオフ値は0.138であり、その値における感度は0.619(0.472-0.766)、特異度は0.761(0.715-0.808)、PPVは0.250(0.167-0.333)、NPVは0.940(0.911-0.968)、UI+は0.155(0.015-0.294)、UI-は0.715(0.679-0.752)であった。事後確率がこのカットオフ値を超えるような組み合わせも複数確認された。 AUCの値から、運動発達の問題によるNDDのスクリーニングは許容可能な精度を示した。一方、感度やUI-は、十分に高いとは言えなかった。この結果から、健診で運動発達の項目に異常がある場合には、NDDのリスクであるかもしれないと考えて慎重に経過を見ていく必要があるが、運動発達の項目に異常がないからといってNDDのリスクがないとは言えず、その他の発達の領域についても検討をする必要があるということが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19の感染拡大の波に影響され、研究協議に支障が出た。その結果、運動発達に関する論文については学術誌に掲載されたが、それ以外の「発達の記録」についての検討は十分にすることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
運動発達に関する論文については、昨年度中に投稿し、学術誌に掲載された。その研究では、生後初期の運動発達の問題は将来の神経発達障害の診断と関連があることが示唆されたが、その予測指標は、スクリーニングツールとして使用するものとしては十分に感度が高くないことも示された。 そこで、より精度が高く有効なNDD早期発見のためのスクリーニングツールの開発のために、過去の文献でNDD診断と関連があるとされている妊娠と幼児期の発達記録から項目を抽出し、それらの将来の神経発達障害の診断に対する予測価値を検討する。そして、その結果に基づき、神経発達障害の早期発見のためのアセスメントツールを作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19感染拡大のため、予定していた分担者との研究協議や、海外の研究者との意見交換等を行うことができなかった。また、学会等での発表の機会も限定された。研究そのものの進捗にも支障を来たし、当初の予定から約1年から年半ほどの遅れが生じている。そのため、研究期間の延長申請を行い、次年度には遅れを取り戻すべく活動する予定である。
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