研究課題/領域番号 |
20K11106
|
研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
清水 宣明 愛知県立大学, 看護学部, 教授 (70261831)
|
研究分担者 |
横田 知子 大手前大学, 国際看護学部, 講師 (70749027)
脇坂 浩 浜松医科大学, 医学部, 教授 (80365189)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 災害対策 / 保育園 / 災害弱者 / 認知症 / 高齢者 / 地域 / 危機管理 |
研究実績の概要 |
この30年の間に高い確率で発生するとされる南海トラフ大地震災害に対する対策が急がれる。特に地域の災害弱者の対策は急務だ。我々は、当事者が現実的で迅速に作成できる方法論を開発し、その実証実験と普及のために2020年に名古屋市中川区との間で連携協定を締結した。同区に立地する名古屋市立正色保育園の協力を得て、本研究を開始している。 2020年度と2021年度は、主に職員を対象に保育園の資質でも実施可能な災害対応策を作るための基礎知識の教育に力を入れ、本研究の方法論の周知を図った。そして、職員が発災時に保育園で発生することが想像される事象(イベント)をリストアップし、それらを対象別かつ時系列別に分類したマトリックス図を作成することで、災害発生時の保育園の被災の姿を具体的なイメージとして描くことを可能にした。この方法論は、複数のマスコミに取り上げられたことで、愛知県にとどまらず様々な地域から多くの反響が寄せられている。 また、子どものいる家庭向けの災害対策の基礎知識を説明した小冊子を作製し、希望する家庭に配布した。中川区の取り組みの実績を基盤として、愛知県福祉局高齢福祉課地域包括ケア・認知症対策室地域づくり推進グループとの間で認知症高齢者の施設および地域における災害対策の制作に関する連携協定を締結した。このプロジェクトは、愛知県あま市と弥富市の認知症高齢者介護施設、およびその立地する地域を対象モデルとして展開した。 このように、本研究は社会的にも認知されて評価されながら順調に進行している。2021年に本研究代表者が所属する大学に「まもるよ ちいさないのち!地域災害弱者対策研究所」が設置され、本研究代表者がその研究所長に就任した。この研究所が本研究の推進に大きく貢献している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究において、保育園を拠点とした地域の災害弱者対策の方法論の実証研究については、以下の点で順調に進展している。①名古屋市役所子ども青少年局保育運営課からの依頼により、市内の保育園の職員を対象とした災害対策および新型コロナウイルス感染対策の基礎および応用知識の教育研修を多数実施した。また、特に新型コロナウイルス感染対策では、講義だけでなく、現場からの疑問・質問に答える機会をメールや電話を含めて数多く設け、その回答にとどまらず現場指導を多数行うことで、保育施設の対策に貢献することができた。②教育研修で使用した資料は、保育施設に限らず、子どもを持つ家庭に役立つように印刷して配布することができた。③それぞれの保育施設で、職員自身が発災時の様子を具体的にイメージして、そこにおける問題を指摘することができるようになった。④災害発生時の課題を解決のための方法路理解し、実際のその取り組みを開始した。このプロセスは方法論として確立することができ、国際学会誌に論文として報告するとともに、多くの保育施設や様々な組織が採用するようになった。⑤愛知県とのプロジェクトである認知症高齢者介護施設の災害避難対策については、災害発生時の問題を抽出するための取り組みと、対策策定のための具体的なプロセスを始動することができた。⑦多数の保育機関、保育施設、および公衆衛生行政などからの依頼で、新型コロナウイルス感染対策のための教育や指導を多数実施した。これは災害危機管理研究の応用である。このように、本研究は、災害対策研究にとどまらず、感染症を含めた地域災害弱者の様々な危機管理の教育および実践活動に発展しうるものであることを実証ことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
2021年4月1日付で愛知県立大学に「まもるよ ちいさないのち!地域災害弱者対策研究所」が設置されて本研究代表者はその所長に着任した。従って、本研究は同研究所の活動として展開している。また、同研究所に所属する小児看護、老年看護、児童福祉の専門家の協力が得られることとなり、より学際的に展開させていく予定である。また、コロナ禍を経験することで、保育施設や地域においても、災害対策への関心と実質的な対策策定の要望が急激に高まってきているので、それに応えることで本研究の社会認知と実績の評価を得ていく。2020~2022年の本研究の実績により、愛知県内はもとより全国への展開が視野に入ってきたので、2023年度はその確実な仕組みづくりと実績を上げることに取り組みたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2020年度と2021年度は、研究推進のための準備段階で、研究対象者に対しての教育活動のウエイトが高かったために、そのために必要とされる経費が少なくて済んだ。次年度は、今までの本研究で作成した災害対策の方法論の実証研究の段階になるので、それらを記録して検証し、社会に公開するために必要な映像制作機器を購入して使用する予定である。また、地域災害対策の方法論をテーマとした国際津波防災学会の分科会を開催する予定なので、その会場費や運営費に本研究費を使用したい。
|