研究課題/領域番号 |
20K11122
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
伊藤 友孝 静岡大学, 工学部, 准教授 (00283341)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 高齢者 / 転倒予防 / 見守り / トレーニング |
研究実績の概要 |
本課題は,歩行診断システムと連動して普段の歩行を見守りながら,対象者毎に的確なケアや転倒予防トレーニングを行える「高齢者のための見守りと転倒予防トレーニングを統合した包括的歩行ケアシステム」を開発し,高齢者の転倒を予防しながら自発的な歩行を促す包括的な仕組みを構築することを目的としている. 令和3年度は,研究の第1フェーズ(令和2年度上期から令和3年度上期まで)の後半と第2フェーズ(令和3年度下期から令和4年度上期まで)の前半として,「転倒予防トレーニング装置および見守りデバイスの開発」と「それらの機能の統合」を実施した.トレーニング装置は,RGB-Dカメラを用いた非拘束での全身動作計測によって施設で使用する際の利便性や精度を大きく向上させることができた.また,転倒予防トレーニングを行いながら,個人毎に特に見守りが必要と判断された部位に関しては,慣性センサを追加で装着することで詳細なデータが得られるようになった.これにより,歩行の状態やトレーニング効果を記録して見守りに使用できるようになった. 高齢者施設での計測実験を計画していたが,新型コロナウイルスの影響で高齢者を対象とした実験をすることができなかったため,高齢者模擬装具(関節可動域の制限やおもりを装着することで,高齢者の特性を模擬できる福祉器具)を装着した若年者に対して実験を行い,装置の精度や機能を確認した.また,模擬装具を付けた状態での歩行診断の結果を元に,歩行の要改善項目を特定し,見守り用の慣性センサを付けてトレーニングの効果を確認した.模擬装具を付けた若年者が対象であったため要改善の事例は少なかったが,高齢者に対して計測実験を行うための訓練効果に関する重要な知見が得られた. なお,令和4年度は,高齢者福祉施設での実験を実施できる見込みで,協力施設と計画を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述のように令和3年度は,研究の第1フェーズの後半および第2フェーズの前半として,「転倒予防トレーニング装置および見守りデバイスの開発」と「それらの機能の統合」を行った.トレーニング装置ならびに見守りデバイスに関して,申請した計画通りに開発を進めることができ,機能や精度の確認を行うことができた. 新型コロナウイルスの影響で,令和3年度は高齢者福祉施設での実験をすることがかなわなかったが,高齢者模擬装具を装着した若年者に対する実験に切り替えてトレーニング実験を実施することができたため,開発に必要な装置の機能や精度の確認,トレーニング効果の確認などは予定通り行うことができた.そのため,上記のように概ね順調に進展していると自己評価した. 今のところ,令和4年度は高齢者福祉施設での実験を実施できる見込みで,協力施設と連携して実験の計画を進めているところである.
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度上期は,第2フェーズ後半として転倒予防トレーニングおよび見守り装置の完成度を高めると同時に,高齢者での見守り実証実験に向けて,使用するデバイスの準備を行う.また,トレーニングと見守りのデータを集約する機能を完成させ,最終的な包括的見守りシステムとしての機能を確認する. 下期には,高齢者施設での実証実験を実施し,包括的見守りシステムとしての機能や効果の確認を行う.新型コロナウイルスの影響で令和3年度の高齢者福祉施設での実験ができなかった分については,引き続き高齢者模擬装具を付けた若年者を対象に実験を行い,高齢者福祉施設での実験を効果的に進められるように,周到に準備を行う. 令和4年度は,協力施設のうち1箇所では実地試験を実施できる見込みで,感染予防対策を徹底した上で安全に高齢者での実証実験を実施する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
装置の開発は計画通り進めることができたが,新型コロナウイルスの影響で協力施設である高齢者福祉施設(2箇所)のいずれも部外者の受け入れが不可能となり,高齢者を対象にした転倒予防トレーニングや見守りの実験を行うことができなかった.そのため,高齢者に貸与して動作の計測を行うためのセンサやタブレットの追加購入を延期し,既に購入済みの数台を用いて製作した見守りデバイスのプロトタイプの機能開発や精度向上に注力することにした.また,謝金についても高齢者に対する実験の実施ができなかったため使用せず,令和4年度の再実験に充てることにした.学会の参加旅費に関しては,オンラインでの実施に変更されたため計画通りに執行できなかったが,その分をデバイス開発(物品購入費)に充当して機能向上を図ることができた. 令和4年度の実証実験で高齢者に貸与するためのデバイスおよびセンサは,4年度上期の見守りデバイスの完成に合わせて最適なものを購入し,下期の実証実験に備える予定である.今年度は,施設での実験を実施できる見込みであるため,当初の計画通りの研究の実施が可能であると考えている.
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