研究課題/領域番号 |
20K11128
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研究機関 | 宮城大学 |
研究代表者 |
安齋 由貴子 宮城大学, 看護学群, 教授 (80248814)
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研究分担者 |
坂東 志乃 (渡邊志乃) 宮城大学, 看護学群, 講師 (60563955)
鈴木 智美 宮城大学, 看護学群, 助教 (70865253) [辞退]
佐藤 泰啓 宮城大学, 看護学群, 助教 (70753002)
村中 峯子 宮城大学, 看護学群, 准教授 (40944004)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 健康格差 / 困難事例 / 住民支援 / 保健師 / 多職種連携 / モデル構築 |
研究実績の概要 |
健康格差状況にある住民に対し市町村保健師が行っている関りの内容から、「支援困難事例」の特徴を明らかにし、今後必要となる支援のあり方について検討した。方法は、成人期かつ健康格差により健康上の課題を持つ対象者への支援経験がある、経験年数6年以上の市町村保健師6名を対象とし、インタビューガイドを用いた半構造化面接を実施した。13事例のデータを収集し、逐語録を作成した後に質的記述的研究法により分析した。 対象者の語りから77のコード、19の小カテゴリー、8の中カテゴリー< >、4の主要カテゴリー【 】を生成した。市町村保健師が遭遇する「支援困難事例」は、<問題解決につながりにくい本人の特徴><家族で影響し合う問題の存在><社会・経済的問題>といった【家庭内に複雑で複数の問題を内包】しているだけでなく、【支援や協力をしてくれる家庭外キーパーソンの不在】【問題解決に向け行動する力のある家庭内キーパーソンの不在】といった中心となる人物の不在状況が重なることで、<支援に時間や人手が必要><緊急対応が必要となるリスク状態の継続><住民の支えにより辛うじて生活を維持>といった【問題が解決の方向に進まない状態の継続】に至っていた。 本研究の結果から、市町村保健師が関わる支援困難事例は、家庭内に複雑で複数の問題を抱えるといった対象者側の要因や、家庭内・外のキーパーソンが不在であるといった状況が重なることにより、問題が解決の方向に進まず市町村保健師側の支援困難につながるということが示唆された。また、本研究の結果により、市町村保健師が支援困難事例に対する共通認識のもと、必要な関りを検討することに役立ち、以って市町村保健師の支援技術向上にもつながると考えられた。この結果は、日本地域看護学会第25回学術集会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
追加のインタビュー調査、実態調査、これらを進めるための専門家会議を予定していた。しかし、新型コロナウイルス感染症拡大により、保健師は感染症対策のため逼迫した状態が続き、研究者らも保健所支援を継続していた。このような状況の中でも、以前収集した事例を分析し、今後の研究の示唆を得ることはできたが、保健師を対象とした調査の実施や専門家会議の開催は困難であり、実施することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症拡大前に実施したインタビューデータを詳細に分析し、さらに追加のデータ収集を行い、健康格差による多問題を抱える住民への支援について明らかにする。 また、事例分析により、健康格差により多問題を抱える住民支援のための他職種連携について方向性を見出し、その結果を基に質問紙を作成する。また、健康格差による多問題を抱える事例の種類、多職種連携の現状、支援者の研修等についても質問項目に加え、保健師を対象とした実態調査を行う。回収率30%を想定し、統計的分析を可能とするため500人程度(市町村の層化無作為抽出)に調査依頼を予定する。 これらの調査結果と専門家会議により、健康格差による多問題を抱える住民について、対象発見の方策から支援体制構築までの支援内容を明らかにし、支援の体系化を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大により、対象となる保健師に協力を得ることが困難と判断し、データ収集や専門家会議を行わなかった。また、研究者らも保健所支援や教育における代替授業(実習)の対応に追われた。しかし、一方で、対面による学会開催も行われ始めたことから、新型コロナウイルス感染症蔓延前に収集したデータによる分析を継続し、学会発表したことから旅費も支出した。 2023年5月8日から新型コロナウイルス感染症は5類感染症に移行することにより、保健師の活動もポストコロナ社会を踏まえた通常業務となる。本研究においても研究計画に基づく研究を再開する。2023年度は、事例分析を進め、全国調査を実施する。これらの結果を踏まえて、健康格差による多問題を抱える住民について、問題の発見から支援体制構築までを明らかにし、体系化を行う。以上の予定から、追加の事例分析のための費用、郵送料等の調査費、研究補助の謝金についての支出を計画している。
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