研究課題/領域番号 |
20K11163
|
研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
松本 壮平 奈良県立医科大学, 医学部, 学内講師 (10398448)
|
研究分担者 |
宮尾 晋太朗 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (00833708)
切畑屋 友希 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (20865282) [辞退]
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 咀嚼力 / 術後後遺症 |
研究実績の概要 |
高齢化社会の癌治療の解決すべき問題の一つに栄養障害からくるフレイルが挙げられる.口腔での咀嚼は食物の消化・吸収の第一段階であるため,咀嚼力低下は 栄養障害の一因となり,これは同時に嚥下機能障害とも関連し誤嚥性肺炎などフレイル特有の疾病につながる可能性がある.上部消化管手術は胃切除を伴い,本来の胃の機能である蠕動運動や器械的咀嚼が障害を受け,このことが残胃の運動および食物の消化・吸収に悪影響を及ぼしていると考えられる.特に口腔での咀 嚼力が低下している患者では,さらに栄養障害のリスクを上昇させていると予想される.本研究では上部消化管周術期の咀嚼機能に着目し,咀嚼と残胃の運動生 理および咀嚼機能と周術期の栄養状態との関連を検討する.また咀嚼機能の向上が,術後の栄養障害を軽減するかどうかを検証する.上部消化管手術後の栄養障 害は患者のQOLの低下のみならず,予後の悪化を招くことが報告されており,本研究は新しいアプローチから,術後栄養障害の解決を試みる重要な取り組みと考 えられる.以下が具体的な方法である 1 咀嚼と胃の運動生理の関係を検討する.1:上部消化管手術の術前・術後に咀嚼力と胃排出能を測定し,関連性を調査する2:Wister系ラットを用いて抜歯 を行なった咀嚼機能低下モデルを作成し,健常ラットとの胃・腸管運動機能の比較評価を行う.またラットの胃切除モデルも作成して,同様の実験を行い,術後 の体重の変化を測定,及び胃内容排出率を計測する 2 咀嚼力と上部消化管手術後の栄養状態の関係を明らかにする.1:上部消化管手術を受ける患者の術前の咀嚼力と術前後の栄養状態を測定し,咀嚼力と栄養 状態の関連を検討する.2:咀嚼力が低下している患者には嚥下機能評価と術前・術後に咀嚼力を高めるリハビリを行い,咀嚼機能評価と栄養状態の測定からリ ハビリの効果を検討する.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
口腔・嚥下機能の評価と術後合併症および栄養状態の関連については症例集積を終了し,データ解析も終了した.反復唾液嚥下テストの低下が術後の栄養状態の悪化と関連することが判明したため,これを論文化している. 咀嚼力測定については咀嚼ガムを用いる予定であったが,コロナ感染症の蔓延が収まらず,実施に際しての感染のリスクを鑑み,中断している状況である.
|
今後の研究の推進方策 |
反復唾液嚥下テストの低下が術後の栄養状態の悪化に関連することが判明したため,周術期に測定を行い,低下患者には嚥下リハビリを行うこととして,実臨床でも行い成果を得た.今後もこの方針を継続していく予定である. また反回神経麻痺の患者では術後の嚥下機能の低下が著しく,これらの改善にも時間がかかることが判明したため,外来でのリハビリを継続する方針としている. コロナ感染が収束の兆しをみせておらず,感染に留意して咀嚼ガムの実験は行っていく方針とする.
|