研究課題/領域番号 |
20K11165
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
黒崎 芳子 北海道医療大学, リハビリテーション科学部, 准教授 (80736322)
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研究分担者 |
橋本 竜作 北海道医療大学, リハビリテーション科学部, 教授 (00411372)
辰巳 寛 愛知学院大学, 心身科学部, 教授 (70514058)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 失語症 / 喚語障害 / コミュニケーション文脈 / 皮膚コンダクタンス反応 |
研究実績の概要 |
失語症者は、ある場面で特定の単語を話すことが困難であっても、同じ単語を意図しない場面においては話すことができるという「自動的行為と意図的行為の解離の現象」(Baillarger-Jacksonの原理)を示すことが知られている。我々は、この現象をコミュニケーション文脈による発話の変動として捉え、失語症者の喚語を促進・抑制するメカニズムについて自律神経活動との関連から検討することを目的としている。 失語症者の自律神経活動を調べた先行研究は、失語症者は覚醒状態が低く、これが言語パフォーマンス低下に関与する見解と、高ストレス条件下では高覚醒状態が引き起こされ発話が阻害されるとする指摘がある。我々は、健常者(N=29)に対し基礎的な喚語能力と生理的覚醒に関する予備的実験の分析を行った。健常群は、喚語が容易な場合には生理的覚醒は低く同時に覚醒時間は短く、一方で既知の単語に対し検索努力の高い課題で生理的覚醒が上昇し覚醒時間が長くなることが示唆された。また、単語への既知感が低い場合は、生理的覚醒は生じにくく、これは単語検索自体が生じないためと推察された。 これらの結果から、以下の仮説を検討した。1.失語症者は障害された言語機能を活性化するために、単語検索に負荷が高まると生理的覚醒が上昇し、言語機能を促進させる試みが生じる。言語機能が改善し検索努力が減少すると、生理的活性化は減少する。2.発話意図の高いコミュニケーション文脈では、喚語への負荷が高まり生理的活性化は上昇する。一方、コミュニケーション文脈が自動的な場合は、喚語はスムーズとなり、生理的活性化は減少する。 コミュニケーション文脈によって言語パフォーマンスの変動が予測され、喚語の促進と安定化のメカニズムを検証するため、実験プログラムの試案作成に取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
現在、健常者の基礎的な喚語能力と生理的活性化に関するデータ分析をすすめている。しかし、新型コロナ感染症の影響で、医療機関の協力を得ることが依然困難であり、失語症者に対する実験プログラムの予備実験が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナ感染の状況によっては、今後も医療機関での失語症者からの協力を得ることが難しいことが予想される。よって、感染予防に配慮しながら、まず健常者を対象とし自律神経活動測定システムと連動させた実験プログラムの開発を目指し、失語症者向けにプログラムの修正および検証に取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度に実施予定であった自律神経活動測定システムと連動させた実験プログラムの開発が遅れたため、機材購入、予備実験への実験協力者への謝金、実験協力施設への旅費の使用が次年度からとなった。
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