本研究の目的は、低い強度の運動でも筋力・筋量増大効果が見込まれる加圧トレーニングが心臓リハビリテーションに安全に応用できるか検討することであった。この目的を達成するためには、心臓リハビリテーションに用いられる強度での運動中における呼吸循環動態が体肢近位端の加圧によってどのように変動するかを丁寧に検討する必要があった。 一般的な心臓リハビリテーションでは、換気性作業閾値レベルの有酸素運動が処方される。そのため、本研究では換気性作業閾値レベルでの自転車エルゴメータ運動中における大腿直筋活動、心拍数、酸素消費量、呼吸苦、自覚的運動強度、および血圧の変動を両下肢近位端への加圧あり条件となし条件で比較検討した。その結果、加圧なし条件と比べ、加圧あり条件の方が低い運動強度で換気性作業閾値に達すること、換気性作業閾値レベルでの運動中における心拍数、酸素摂取量、呼吸苦、二重積が低いこと、ならびに自覚的運動強度と大腿直筋活動には有意な差が認められないことが明らかになった。これらの結果は健常成人男性を対象としていたため、実際の心疾患患者のデータを取得することが今後の課題である。一方で、この課題については、低強度加圧レジスタンス運動中の呼吸循環動態において健常成人男性と心疾患患者間で有意な差が認められないことから、医師が十分に管理した条件を整えれば安全に実施できる可能性が高いと考えている。 本研究で行った実験結果は最終年度の2023年度に研究論文としてまとめられ、国際誌に掲載された。
|