研究課題である運動の種類による筋由来の栄養因子(マイオカイン)群の分泌動態を解析中である。5週齢の雄ラットを無作為に、1.非運動群(ケージ内飼育のみ)、2.強制運動群(トレッドミル走行)、3.自発走行群(running wheel付きケージにて飼育)、4.電気刺激群(下肢皮膚上の電極にて刺激)および5.坐骨神経切断群(下肢筋麻痺とした比較対象群)に分けた。運動を負荷後、腓腹筋およびヒラメ筋を摘出してその抽出液中のマイオカイン(BDNF、IGF-1、irisinおよびcathepsin B)を測定した。 2020年度に運動を7日間負荷した後の下肢筋にて運動群間でマイオカイン発現量に有意な差は見られなかったため、2021年度には運動期間を14日間に延長し、同様にマイオカイン群の測定を行ったが、14日後においても運動群間でマイオカイン発現量に有意な差は見られなかった。ここまで健常ラットを用いた予備実験として検討してきたが、健常群では筋マイオカインのベースラインが高く運動の種類による差が生じにくいと考え、2022年度は脳梗塞モデルラットを用いて検討した。脳梗塞により生じる記憶能低下の回復効果も同時に確認した。結果として、電気刺激群でIGF-1が有意に増加していた。また腓腹筋よりもヒラメ筋で運動によるマイオカイン類の増加が顕著に見られたことから、筋特異性も考慮する必要があることが示された。記憶能については運動の種類や強度による差は見られなかったが、いずれの群も非運動群に比べると有意に回復していた。
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