研究課題
メタ認知は自身を客観視する能力で、自身の能力の推定や行動の監視に関わり、実生活において適応的な行動をとるのに必要不可欠な能力である。外傷性脳損傷患者はこの能力が低下していることが知られており、リハビリテーションの阻害要因となる。しかしながら、このメタ認知の評価は質問紙によって評価されており、患者自身の回答と家族や介助者の回答の乖離(患者自身の評価と他者の評価がどれくらい離れているのか)によって評価される。この評価方法は簡便だが、患者や家族の回答に偏り(バイアス)が生じる可能性があるため、より客観的な評価方法が求められている。外傷性脳損傷患者のメタ認知機能を評価するためのパソコンを使用した行動課題を作成し、健常者、患者のデータ収集を行った。今年度は健常者、患者ともに目標の症例数のデータ収集を完了し、解析、論文執筆を行った。また、当初の計画に追加して、外傷性脳損傷患者の解剖学的MRI画像の重ね合わせ解析を行った。行動課題によって測定されたメタ認知の問題がどの損傷領域と関連しているのかを検討することは非常に重要な課題であると考えている。結果としては、行動課題で測定したメタ認知の成績が、これまで臨床的に利用されてきた主観的な評価指標と相関することが確認された。これは行動課題が臨床的に有用であることを示していると考えられる。特に、行動課題を使用した評価は質問紙評価によくある回答者バイアスが混入しないため、既存評価よりもより客観的な評価が可能である点に意義があると考えている。今後、損傷領域との対応等をまとめ、論文投稿する予定である。
3: やや遅れている
新型コロナウイルス感染症拡大のために、健常者、患者のデータ収集ができない期間があった。データ収集できない期間に被験者の内諾を取ったり、解析可能なデータから解析を進めるなどして対応している。当初の予定からはやや遅れたものの、年度内にデータ収集を終えることができた。
脳の損傷箇所と行動課題成績の対応を検討する、MRI画像解析を追加したが、解析の準備がほぼ終わっており、大きな遅延なく遂行可能である。データ収集も終えているため、解析計画に従って解析を行い、論文執筆や、成果の公表を進めていく。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大のため、学会等がオンラインとなり、旅費がかからなかったこと、患者の被験者数がやや減ってしまい謝金の支払い分に剰余が生じた。次年度の学会参加費、論文執筆時の英文校正費、投稿料に充てたい。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件)
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