研究課題
メタ認知とは、自身の行動、認知を客観視する能力であり、適応的な行動をとる上で重要な役割を果たすと考えられている。本申請課題の目的は外傷性脳損傷(Traumatic Brain Injury: TBI)患者のメタ認知測定のための行動学的課題を作成し、その臨床的有用性を示すものであった。健常成人105名、TBI患者28名に対して、メタ認知測定課題を実施し、結果を比較した。TBI患者に対しては、臨床で使用される神経心理学的検査(全般的知能、注意機能、記憶機能、遂行機能)、自己認識の質問紙(PCRS、FrSBe)、MRI構造画像(T2強調画像、FLAIR画像)を収集した。解析の結果以下の知見を得た。①TBI患者はメタ認知の正確性が健常者に比して低下している。②TBI患者は健常者に比して、自身の能力を過大に評価する傾向(自信過剰な傾向)がある。③メタ認知の成績は他の神経心理学的検査との相関がない、あるいは弱く、比較的独立した機能である。④メタ認知の成績低下を認める患者は左前頭部の損傷を呈している。以上より、TBI患者は自身の行動や認知に対して客観視する能力の低下が示唆され、この機能の低下が患者の適応的行動の問題につながっている可能性を示した。現在、メタ認知能力を定量的に測定する臨床的な検査は存在せず、本研究にて実施した課題は、患者のメタ認知能力を測定する上で臨床的にも有用であると考える。これら内容をまとめ、国内学会、国際学会にて発表した。また論文としてまとめ、国際誌へ投稿し受理されている。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
Applied Ergonomics
巻: 106 ページ: 103892~103892
10.1016/j.apergo.2022.103892
Journal of Cognitive Neuroscience
巻: 35 ページ: 1960~1971
10.1162/jocn_a_02064