研究課題/領域番号 |
20K11181
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
関根 克尚 金沢大学, 保健学系, 准教授 (10163106)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 骨格筋 / 生体インピーダンス計測 |
研究実績の概要 |
申請者が独自に開発した手法を用いて骨格筋の電気インピーダンス計測をシミュレーションしたところ、先行研究の検討対象外であった10Hz以下の低周波数域で、骨格筋細胞が細長い筒であるということに起因する特異な電気インピーダンスの周波数変化が出現することが予言された。この低周波数域での電気インピーダンス特性を含めて解析すれば、骨格筋緊張の定量的指標値が正確に決定できると考えた。しかし、現在市販されている生体インピーダンス計測装置、先行研究で使用された自作装置のなかで、必要とされる低周波数域まで計測できる装置はなかった。現有の計測装置を用いて本年度に実施した以下の検討により、電気化学の分野で使用されるポテンショスタット/ガルバノスタット装置が低周波数域の電気インピーダンス計測に利用できる可能性があることが明らかになった。 検討用試料として、コンデンサと抵抗素子の並列回路を3個直列に結合させた回路を用いた。ポテンショスタット/ガルバノスタット装置としてHAL3001A(北斗電工)を用い、WE1端子とCE端子で回路全体に電流を印加し、WE2端子とRE端子を用いて中央の並列回路にかかる電圧を計測した。HAL300Aの入力信号の制御と出力信号の解析には4192A LFインピーダンスアナライザ(Agilent)を用い、5Hzから13MHzの周波数範囲で調べた。その結果、10kHz以下の実測結果は、中央の並列回路のコンデンサの電気容量値と抵抗素子の抵抗値から期待される電気インピーダンスの周波数変化と一致することがわかった。しかし、10kHzより高周波数域で実測値が不規則に変化した。これは、HAL3001A内部の電気回路の特性によるものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19対策のため、研究作業が著しく制限された。すなわち、年度初めは、学生の登校が禁止され、申請者は遠隔授業の準備に労力を費やし、研究活動が停止した。年度後半では、開講時期が年度前半から移動された学生実験も担当したため教育業務が増加し、研究活動が制限された。このような状況下で、現有の装置を用いた検討を行い、電気化学用ポテンショスタット/ガルバノスタット装置が低周波数域の計測に有用であることを明らかにできたが、低周波数域だけでなく高周波数域も計測できる装置の選定、購入、および装置を用いた計測は実行できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
1)計測方法確立:1Hzから1MHz程度の周波数範囲で電気インピーダンスを計測できる電気化学用ポテンショスタット/ガルバノスタット装置を選定し、購入する。コンデンサと抵抗素子を組み合わせた回路、筋組織と同程度の大きさの容器に入れた電解質水溶液などを用い、購入した計測装置の性能を評価する。必要な場合には、計測誤差を軽減、除去できる計測法、計測誤差の補正法を構築する。 2)筋組織模型の計測と計測結果解析:本研究では、骨格筋緊張度の定量的指標として、筋線維径、筋線維内の伝導率、筋線維間隙の伝導率などを選んでいる。さらに、組織内深さ方向の情報獲得、筋線維方向・羽状角変化の自動検出技術基礎構築も目指している。プラスチック丸棒、プラスチック筒、ガラス筒などを用いて作成した筋組織の模型の計測を行い、計測結果とシミュレーション結果とを比較して、計測結果の解析に必要な情報が精度よく計測できるかどうか検証する。この知見にもとづいて、計測結果解析の実際的手順の構築を進める。 3)食肉、実験動物の計測と計測結果解析:食肉、実験動物の計測を行い、その結果に2)で構築した手順を適用し、手順の妥当性の検証と改良を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
広い周波数域で生体電気インピーダンスを計測するために電気化学用ポテンショスタット/ガルバノスタット装置が有効であることは明らかにできたが、具体的な機種選定、購入までには到達できなかったために次年度使用額が生じた。次年度使用額と令和3年度に請求した助成金については、次年度初めに決定予定の計測器の購入に使用する。
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