研究実績の概要 |
2022年度は、2021年度までと同様に研究データの収集を行う医療機関において、新型コロナウイルス感染症への対応の観点から、データ測定のために透析治療以外の目的で来院する許可がおりなかった。そのため、透析中運動療法の効果のメカニズムの一端となるマイオカインデータ、骨格筋機能、運動耐容能、心血管機能の測定が困難であった。 そのような中、これまでの測定データに基づく解析の結果、透析患者の重症化予防のための透析中運動療法を継続できない患者の特徴として、歩行速度が遅い、高齢、慢性炎症状態にある患者、つまりフレイルや低栄養炎症状態にある患者が抽出された(Yamaguchi T, Yabe H, Kono K, Nephrology DIalysis Transplantation, 2022)。また、低栄養と体力低下が併存している透析患者ほど生命予後が不良であること(Yabe H, Okada K, Kono K, et al. Inten Urology and Nephrol, 2023)、同様に低栄養の患者ほど透析中運動療法の効果が低いことを明らかにした(Takahashi R, Habe H, Kono K, et al. J Ren Nutri. 2023)。 以上の結果から、透析患者の重症化予防に向けた透析中運動の実践や継続に対して低栄養、慢性炎症、フレイルがネガティブな影響を及ぼすことが示唆され、これらは骨格筋の機能低下と密接に関わることが先行研究からわかっている。よって、骨格筋の生理活性物質であるマイオカイン等の発現量低下にもその機序として関与していること、そして、透析中運動療法によってマイオカイン発現量が増加するかどうかを2023年度の調査において明確にする予定である。
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