研究実績の概要 |
脳梗塞などの運動療法において、アディポカイン、炎症性サイトカイン、アポトーシスの評価、血小板の活性化、血管内皮の機能障害、神経細胞死の評価を解析し、動脈硬化性疾患の最適なモダリティーや負荷強度を持つ運動療法を開発していくことを目的に、種々の指標を測定し比較検討し、以下の結果を得た。 1) 脳梗塞慢性期患者に軽度~中等度の運動療法を継続するとCD4/8比、NK活性, リンパ球反応性は増大した。2) 脳梗塞慢性期患者に軽~中等度の運動療法を継続すると、運動療法の施行時間に応じて血小板活性化 (βTG, PF4)、血管内皮障害 (TM, EC)、接着分子 (VCAM, ICAM, ELAM) の各指標が低下し、線溶系 (PIC)と抗凝固 (ATIII, TAT) の指標は増大していく。3) また運動療法によりアポトーシス (FasL, TNFR) や慢性炎症 (IL-6, IL-1β) の各指標は低下した。運動療法の継続により、アポトーシスは減少し、神経細胞死を抑制する可能性も考えられる。これらから運動療法の継続は細胞免疫、線溶機能、抗凝固作用、血小板活性化、血管内皮機能、接着分子、炎症性サイトカイン、アポトーシス、神経細胞死を介して生体を調節している可能性が考えられた。脳梗塞の発症は、リンパ球・樹状細胞の血管内皮粘着・侵入→動脈硬化巣の形成→内皮機能の障害→血小板の凝集亢進・線溶機能の低下→血栓形成→神経細胞死という過程をとることが報告されているが、私達の先行研究では運動療法がこれら全ての過程に影響を及ぼしていることが判明し、軽~中等度の運動療法の継続は高齢者脳梗塞の二次予防に寄与する可能性があると思われる。このように運動療法は、単に運動機能を改善するだけでなく、生体に多彩な効果を及ぼし、疾病予防や健康増進に寄与することが示唆された。
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