研究実績の概要 |
続発性下肢リンパ浮腫は、がん治療後に発症する後遺症で難治性である。標準治療として、スキンケア、用手的リンパドレナージ(Manual lymph drainage,MLD)、弾性着衣や弾性包帯による圧迫療法、圧迫下での運動療法を組み合わせた複合的理学療法(Complex physical therapy:CPT)が推奨されているがエビデンスは不十分である。 本研究の目的は、CPTを構成する個々の治療の有効性を明らかにし治療指針を確立することである。対象は婦人科がん治療後に続発性下肢リンパ浮腫と診断された患者とし、A)MLD(臥位で30 分間リンパ浮腫セラピストが実施)、B)圧迫+圧迫下運動療法(臥位で多層包帯法による圧迫+てらすエルゴⅡ(昭和電機株式会社)を用いたペダル駆動の計30分間)、C)下肢挙上のみ(臥位で脚専用マットを使用し下肢全体を拳上30 分間)の3通りの介入を、ブロックランダム化クロスオーバー比較試験(一重盲検:評価者)として実施した。 主要評価項目を下肢体積とし、測定には体積測定機器Perometer Type 1000M(Pero-System社、独)を使用した。 結果、22名(平均年齢63.9±11.1歳)が完遂した。重症度は国際リンパ学会分類の2期前期10名、2期後期12名。Paired-T検定で3介入いずれも介入後に体積は有意に減少した。3介入間の比較では。線形混合モデルを用いた分散分析で有意差を認めなかったが、患側体積と健側体積の差が10 %を超えた症例(N=19)では、C群と比較しB群で下肢体積が有意に減少した。 リンパ浮腫重症度が一定以上の症例では、圧迫下運動療法の即時効果が示された。一方、MLDは介入後に下肢体積の有意な減少を認めたものの、下肢挙上と比較して優位性が得られなかったことから、治療効果を高めるためには3介入の併用が必要であることが示された。
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