研究実績の概要 |
特定の知覚刺激を使った課題を繰り返し行うことでその課題成績を向上させることができる.このプロセスは知覚学習と呼ばれ,知覚学習理論に基づいたリハビリテーション戦略は触覚機能障がいを回復へと導く可能性があると考えられている.昨年度および一昨年度は,知覚学習効果には大きなばらつきがあり,その背景には一次体性感覚野におけるα帯域の律動活動変化の違いが関与していることを確認した.そこで,本年度はα帯域の脳律動活動を増強することができる経頭蓋交流電流刺激(tACS)を用いることで,知覚学習効果を増強できるかを検証した.触覚方位弁別課題とは幅の異なる縞(0.35, 0.5, 0.75, 1.0, 1.2, 1.5, 2.0, 3.0 mm)が刻み込まれたドーム状の機器を対象者の右示指に押し当て,その縞の方位(縦or横)を回答する課題である.tACSは課題トレーニングに合わせて与え,tACSの刺激強度は0.7 mA,刺激周波数は10 Hzとし,刺激電極はCP3と左肩に貼付した.結果として,tACSを与えながら課題トレーニングを行った群と課題トレーニングのみを行った群ともに触覚方位弁別の課題成績が同程度向上した.これらの結果から,tACSの適用方法(刺激強度,刺激周波数,電極貼付位置等)に検討の余地は残されているものの,一次体性感覚野をターゲットにしたα帯域のtACSは知覚学習効果を増強させる効果がない可能性が示唆された.
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