研究課題
近年のBMIの進歩はめざましく、自分の脳で思い描いた通りに自由に動く義手や、聾者の聴覚を回復させる人工内耳の開発も盛んに行われている。しかし、味覚を喪失してしまった人に対する味覚BMIの試みは未だ行われていない。口腔の第一の機能は水分や栄養の摂取であるが、人生の最後まで美味しく、かつ、安心安全にものを食すること、口から味を感じながら生活することは、QOLの向上に極めて重要である。本研究の究極的な目的でもある美味しさを感じられる人工の舌を完成させるためには「美味しさ」を感じる味覚の回路を完全に理解する必要がある。脳内の味覚回路は、比較的原始的な「生存のための摂食行動」を引き起こす味覚と、より高次機能としての「美味しさ」を感じる味覚が途中で枝分かれし異なる経路を辿ることが分かっている。現時点では、その分岐点とされる一次味覚野や島皮質以降の味覚脳内回路は不明なままで、美味しいと感じる味覚地図の多くは理解できていない。そこで、本研究では、脳内味覚回路がヒトに近い霊長類に対して、最新の細胞外記録法として注目されているjuxtacellular recording法を用いることにより脳内の味覚地図を解明し、味覚BMIの開発に向けた基礎的データを供給すること目指した。現在、高次認知と情動とを統合する役割を持つ「島皮質」を美味しいと感じる味覚回路の重要ポイントと位置づけて、齧歯類や霊長類の味覚回路の違いを含めて、三次元的に解析を進めている。また、島皮質に至るまでの舌側の末梢の神経回路や他の研究試料での味覚神経回路への対象領域の拡大を含め幅広く解析を進めている。
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Anatomical Science International
巻: 98 ページ: 66~76
10.1007/s12565-022-00673-8