研究課題/領域番号 |
20K11202
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
菅野 重範 東北大学, 大学病院, 講師 (00596645)
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研究分担者 |
三須 建郎 東北大学, 大学病院, 講師 (00396491)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 特発性正常圧水頭症 / アルツハイマー病 |
研究実績の概要 |
2021年度は,東北大学病院高次脳機能障害科に入院された特発性正常圧水頭症患者のうち10名から本研究の参加同意を得た.注意機能,遂行機能,記憶能力を中心に評価する神経心理検査,歩行検査,安静時機能的MRIの撮像,拡散テンソル画像の撮像,脳血流シンチと線条体シンチの撮像,アルツハイマー病に関連する髄液バイオマーカーの測定が全例において施行された.また,研究代表者が作成した特発性正常圧水頭症の3主徴(歩行障害,認知機能障害,排尿障害)の重症度を評価するアンケートが患者とその介護者の全例におてい施行され、3主徴に関する病態失認の重症度を全例で評価することができた。その一方、無為・無関心の評価に関しては、新型コロナウィルス感染の流行により、多くの研究参加者が日常生活での行動の制限を受けてしまったため、評価の継続を断念せざるを得なかった。 昨年度の研究参加者を含めた安静時機能的MRI画像のデータを用いて、独立成分分析を施行した結果、研究代表者の先行研究において特発性正常圧水頭症における認知機能 (特に注意機能と記憶能力)との強い関連が示されたDefault mode networkと,内受容性の情報に基づいてどの内的・外的情報に最も関心を向けるのかを制御しているとされているSalience network,意図した行為の実行に深く関連するものと推察される左右各々のexecutive networkを、昨年度と同様に全て検出することができた.また,拡散テンソル画像のデータを解析することにより,各患者における大脳白質の構造完全性を測定することもできた.2022年度も2020年度、2021年度と同様に,特発性正常圧水頭症患者から研究参加者を募り,上記のデータの収集を継続する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
宮城県における新型コロナウィルスの流行により,2021年度も2020年度と同様に、東北大学病院高次脳機能障害科を受診する特発性正常圧水頭症患者の人数が減少した。また、東北大学病院には新型コロナウィルス感染者を治療するため専用病棟が現在も確保されており、2021年度も特発性正常圧水頭症患者の精査入院に使用できるベッド数が半減したままである。新型コロナウィルスの流行前には、特発性正常圧水頭症患者の研究参加者数が年間20人前後となると予想されていたが,上記の影響を受け実際の研究参加者数はその人数を大きく下回った.
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今後の研究の推進方策 |
国内の新型コロナウィルスの流行が収まるまでは,現状の研究参加者数で推移するものと予想されるので,新型コロナウィルスの流行が収まった以降で,年度毎の研究参加者数を極力増やす(目標は25名)予定である.しかしながら,東北大学病院高次脳機能障害科に精査入院する特発性正常圧水頭症の入院患者数が新型コロナウィルスの流行が収まった以降も増加しない場合は,研究期間の延長を検討する方針である. 本研究では安静時機能的MRIの撮像,拡散テンソル画像の撮像に使用するMRI装置を全ての研究参加者において統一させる方針としているため,他の医療機関で精査された特発性正常圧水頭症患者から研究参加者を募集することはしない予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度と同様に2021年度も新型コロナウィルスの流行が続いたため、2021年度の研究参加者数は10人と当初予定していた人数(20人)を大きく下回った.その結果,データ解析や神経心理検査に必要な経費の支出が減少した.また,2021年度は本研究で得られた知見を学会で発表しない方針となったため、旅費を一切使用することがなかった.更に,大脳白質障害に関連する髄液バイオマーカーの測定をまだ施行していない(検体は凍結保存している)ことも支出が減少した原因の一つである. 現在も新型コロナウィルスが日本国内のみならず海外でも流行しており,2022年度も研究参加者の増加や,国内,国際学会において研究成果を現地で発表する機会が得られないかもしれないが,新型コロナウィルスの流行が収まった後は,研究参加者の増加が十分に期待できると我々は予想しており,2021年度に使用できなかった経費は,2022年度以降に研究参加者が増加した際の経費に回す予定である.
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