• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実施状況報告書

仮想現実と経頭蓋直流電気刺激を用いた新たなリハビリテーションの開発

研究課題

研究課題/領域番号 20K11205
研究機関金沢大学

研究代表者

久保田 雅史  金沢大学, 保健学系, 准教授 (60422672)

研究分担者 長宗 高樹  福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (80397827)
松尾 英明  福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 理学療法士 (60529387)
渡部 佑有子  福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 作業療法士 (60795087)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード経頭蓋直流電気刺激 / 末梢神経電気刺激 / 脳卒中 / 仮想現実
研究実績の概要

本年度は、健常人におけるVRリハビリテーションのみと、経頭蓋直流電気刺激(tDCS)との併用、さらに末梢神経電気刺激(TES)の併用の影響を運動制御機能と脳機能の観点から調査した。その結果、現実課題と比較してVR課題では、脳の活動領域や活動パターンが異なることが明らかとなった。具体的には、内側前頭前野の活動が増大するとともに、現実課題では運動課題中に徐々に活動が低下する一方で、VR課題では徐々に脳活動を高めていた。さらに、TESが脳活動に与える影響度合いも、現実課題よりVR課題で大きくなることも明らかにすることができた。これは、脳卒中後の皮質脊髄路の興奮性の損傷側ー非損傷側アンバランスさに対して、TESやtDCSを併用したVRリハビリテーションは非常に有効性が高い可能性を示唆している。
さらに、じっさいの脳卒中症例においても、VRトレーニングによる影響を調査した。当初はクロスオーバー試験を実施予定であったが、近年の脳卒中症例の在院日数短縮に伴い、介入期間を確保できないため、即時効果と短期効果に焦点を当てて調査を行った。その結果、特に重症運動麻痺を呈する脳卒中症例では、実施直後に上肢機能評価であるFugl-Meyer assessmentが向上する症例や、Block Box testが改善する症例を認めた。一方で、高次機能障害によって視空間認知機能が低下した症例や、注意機能障害、座位保持困難症例ではVR環境でのトレーニングの遂行に難渋した。
これらの結果より、VRトレーニングは、通常の現実課題とは異なる脳活動パターンをとること、TESやtDCSなどの影響を受けやすく反応性が高まること、さらに高次機能障害の軽度で運動麻痺が重症となった症例には、新たなリハビリテーション手法となりえることが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

健常人でのプロトコールは予定通り実施できている。ただし、想定していた評価項目の一つである運動誘発電位(MEP)の計測は、研究施設の変更に伴い、実施できていない。
一方、脳卒中症例においてもデータ計測は進捗できている。当初はクロスオーバー試験を想定していたが、在院日数の短縮やCOVID-19感染症の蔓延によって研究実施期間が限定されたことにより、研究手法を変更して実施している。

今後の研究の推進方策

健常人においては、TESのパラメータを変更し、高強度での刺激によってVR課題中の脳活動がどうなるかは明らかにされておらず、この点に関しては早急に計測を行う予定である。
また、脳卒中症例においては、即時的変化に関しては明らかにできてきたが、短期間連続使用した際の変化に関しては明らかにされていない。今後、脳卒中症例に対してもtDCSやTESとの併用効果を含めて検証していく必要がある。
現状作成しているVR課題は、BBT、リーチング、ワイピング、コース立方体の4種類であるが、脳卒中後の上肢機能評価としてはSTEFやARATなどの評価手法も広く行われている。これらもVR化することで、より広い症例に対して実施できると考えている。
さらに、蓄積したデータに関して、順次学会及び論文にて公開していく予定である。

次年度使用額が生じた理由

COVID-19により学会がオンライン対応となり、実際の出張予定が減少たことや、研究ミーティングもオンライン化することによって繰り越しが発生した。国際学会への発表を次年度へ振り替えたため、次年度使用額が生じている。
また、論文校正や投稿・掲載料として検討していたが、校正・投稿を次年度に繰り越したため、実際に使用する次年度使用額が生じた。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 4件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] Neuromuscular electrical stimulation in the intensive care unit prevents muscle atrophy in critically ill older patients: A retrospective cohort study2022

    • 著者名/発表者名
      Nonoyama Tadayoshi、Shigemi Hiroko、Kubota Masafumi、Matsumine Akihiko、Shigemi Kenji、Ishizuka Tamotsu
    • 雑誌名

      Medicine

      巻: 101 ページ: e29451~e29451

    • DOI

      10.1097/md.0000000000029451

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 体重免荷座位練習前後に座圧分布及び体幹筋活動評価を行った視床出血の一例2022

    • 著者名/発表者名
      井上 大聖, 渡邉 拓, 松村 真裕美, 梅田 秀人, 久保田 雅史
    • 雑誌名

      理学療法福井

      巻: 26 ページ: 15-17

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 急性期からの脳卒中リハビリテーション 理論と実際2022

    • 著者名/発表者名
      久保田 雅史
    • 雑誌名

      理学療法京都

      巻: 51 ページ: 18-24

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Combining transcranial direct current stimulation and peripheral electrical stimulation to improve upper limb function in a patient with acute central cord syndrome: a case report2022

    • 著者名/発表者名
      Matsuo Hideaki、Kubota Masafumi、Hori Yasue、Izubuchi Yuya、Takahashi Ai、Watanabe Shuji、Nakajima Hideaki、Matsumine Akihiko
    • 雑誌名

      Journal of International Medical Research

      巻: 50 ページ: -

    • DOI

      10.1177/03000605221083248

  • [学会発表] 現実環境とVR環境でのBox and Block Test遂行中に末梢神経電気刺激が脳活動に与える影響2023

    • 著者名/発表者名
      久保田雅史,近内琢朗,高見悠生
    • 学会等名
      JSEK
  • [学会発表] 卒前卒後教育に関して、金沢大学の現状と課題2023

    • 著者名/発表者名
      久保田 雅史
    • 学会等名
      第31回石川県理学療法学術大会
    • 招待講演
  • [学会発表] 運動制御の評価と治療 『運動制御の改善を促す物理療法』2023

    • 著者名/発表者名
      久保田 雅史
    • 学会等名
      日本物理療法合同学術大会2023
    • 招待講演
  • [学会発表] 重度麻痺症例におけるバーチャルリアリティを用いた運動課題の試み:症例報告2023

    • 著者名/発表者名
      久保田 雅史
    • 学会等名
      日本物理療法合同学術大会2023
    • 招待講演
  • [学会発表] 脳卒中急性期における上肢運動麻痺に対する 経頭蓋直流電気刺激と末梢神経電気刺激の併用効果2022

    • 著者名/発表者名
      久保田雅史、松尾英明、松村真裕美、成瀬廣亮、安竹千秋、渡部佑有子、山村修
    • 学会等名
      第20回日本神経理学療法学術大会
  • [学会発表] 歩行障害に対する 理学療法ガイドライン2022

    • 著者名/発表者名
      久保田雅史
    • 学会等名
      第20回日本神経理学療法学術大会
    • 招待講演
  • [学会発表] 人工膝関節全置換術12か月後に残存する疼痛に 影響を与える因子の検索2022

    • 著者名/発表者名
      久保田雅史, 小久保安朗, 松尾英明, 成瀬廣亮, 庄司一希, 松峯昭彦
    • 学会等名
      第10回日本運動器理学療法学会学術大会
  • [図書] 最新理学療法学講座 中枢神経系理学療法学2022

    • 著者名/発表者名
      山口 智史、山田 実
    • 総ページ数
      384
    • 出版者
      医歯薬出版
    • ISBN
      9784263267417
  • [図書] 理学療法プログラムデザインⅤ 神経系・内部障害編2022

    • 著者名/発表者名
      市橋 則明
    • 総ページ数
      384
    • 出版者
      文光堂
    • ISBN
      9784830646003

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi