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2021 年度 実施状況報告書

両手間転移からニューロリハビリテーションへの新たなアプローチ

研究課題

研究課題/領域番号 20K11213
研究機関福島県立医科大学

研究代表者

深掘 良二  福島県立医科大学, 医学部, 助教 (40457784)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード動作記憶 / 両手間転移
研究実績の概要

手の動作に関する学習は利き手依存であり、それらの動作学習は対応する運動野に記憶されると考えられている。これらの記憶は非利き手にも影響を与えることが分かっており、このことを両手間転移と呼んでいる。本研究では両手間転移を担う神経回路の解明と、運動障害時の機能回復に関する基礎的な成果を目指して進めている。
令和3年度ではこれまでに実験が終わったデータに関して解析を進めた。特にレバーの移動軌跡などの測定データを用いて、両手間転移に関する研究を進めた。また、昨年度に進めていたGABAアゴニストを投与した実験を継続し、原学習時に学習前肢とは反対の前肢(非学習前肢)に対応する運動野の影響を調べた。また、ローズベンガルを用いたPhotothrombosis法による脳梗塞モデル動物の作製を検討した。
学習の両手間転移は学習量に依存すると考えられるが、これに関しての詳細な知見はなかった。今回、我々は学習量の異なる群で比較実験を行い、転移後の軌跡データをもとに原学習の学習量と転移後の運動の遂行に関して解析を行った。動作への反応時間だけではなく、動物が押すレバーの移動軌跡や速度は学習によって大きく変化し、学習量に依存してスムーズに、素早くなることが分かった。これらと同様の解析手法を用いて、GABAアゴニストを用いた両手間転移実験、脳梗塞モデル動物の両手間転移実験を進めている。
遺伝子導入に関しては、組換え酵素依存的な遺伝子発現を試みている。遺伝子導入に関しては、所属研究室で開発された逆行性輸送ベクターとアデノ随伴ウィルスを組み合わせて行っている。これらを使用し、昆虫のイオンチャネル型嗅物質受容体遺伝子(Fukabori et al, 2020)を経路特異的に発現させるシステムを検討し、それらの経路が転移学習に与える影響を調べている。また、神経活動を操作する他の遺伝子についても検討していく計画である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

頭部拘束型オペラント実験装置を用いて、片方の手でレバー押しの動作を学習させ(原学習)、その後にもう一方の手でレバー押しをさせ(再学習)、学習の転移に関わる神経回路網の研究に取り組んだ。令和3年度は動作の詳細な動きを測定するために記録を行うシステムに変更を加えた。レバーは動物が触っていないニュートラルポジションを基準に、押し切った状態と引き切った状態の間を自由に動かすことができ、システムの変更によりその軌跡を記録することが可能となった。レバーの移動した軌跡を解析することによって反応時間だけではなく、運動の円滑さ、運動の速さなどを測定し、これらの指標の変化を転移学習前後で比較した。また動物の学習量を変化させることにより、転移学習の効率が変化するかを解析した。
レバー軌跡の解析の結果、レバー押し運動は原学習初期には素早く反応することができず、押す動作は何度かの失敗を経て急激に押し込む行動が多いことが分かった。これらの行動は運動を繰り返すごとに徐々に減少し、最終的には素早い、滑らかな運動をするようになった。また、レバー押しを十分に訓練した(400回成功させた)群と訓練初期(40回成功させた群)に分けて比較したところ、再学習時の運動は十分に訓練した群においてより素早い滑らかな運動をすることが分かった。訓練の程度によって転移学習が影響受けることが分かった。
現在、訓練量の違いによる変化を明確にするためにサンプル数を増やす実験を継続して行っている。また、GABAアゴニストを用いた同様の実験、脳梗塞モデル動物を用いた実験、昆虫のイオンチャネル型嗅物質受容体遺伝子(Fukabori et al., 2020)や緑膿菌毒素(Kreitman et al., 1994)などをウィルスベクターで神経細胞に導入させる実験に着手しており、期間内に本課題の研究目標をすべて到達できるように研究を進めている。

今後の研究の推進方策

令和4年度では、学習量の違いによる転移学習の変化について論文をまとめていく。本研究では動物において両手間転移を調べた独自性の高い研究であり、訓練量の差が両手間転移の程度に影響を与えることを示せたことは今後の研究に大きな影響を与えると考えている。また原学習時に非利き手側の運動野にGABAアゴニストを投与した実験について、原学習時の運動野の機能を慎重に調べながら解析、または追加実験などをして研究をまとめていく。
経路特異的な機能を調べるためにウィルスベクターを用いた遺伝子導入を行い、転移学習の変化を調べていく。本研究室ではイムノトキシン細胞標的法(Fukabori et al, 2012)や緑膿菌毒素PE38遺伝子を用いた経路選択的除去実験を試みている。これらの結果はGABAアゴニストを用いた研究より詳細な、半球間を連絡する経路の役割を明らかにする。また昆虫のイオンチャネル型嗅物質受容体遺伝子、線虫グルタミン酸作動性塩素チャネルは神経活動をそれぞれ興奮性、抑制性に制御できる。経路選択的に発現させることにより、神経回路を残したまま機能解析をできるため、より詳細な役割を知ることができる。また光刺激によって神経活動を操作できる光刺激依存性イオンチャネル遺伝子(チャネルロドプシン、アーキロドプシン)などを用いた実験では短時間の制御が可能であるため、学習の各試行における転移のタイミングの解析を行う。
また、上記の技術を用いて脳梗塞モデル動物における転移学習の変化を調べ、ニューロリハビリテーションの基礎的な研究を進めていく。

次年度使用額が生じた理由

世界情勢と物流の変化により、海外製品の購入が次年度になってしまったため。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2021 その他

すべて 学会発表 (1件) 備考 (1件)

  • [学会発表] Ionotropic receptor-mediated chemogenetic activation of LC neurons enhances conditioned memory retrieval through adrenergic receptor subtypes in the basolateral amygdala2021

    • 著者名/発表者名
      Ryoji Fukabori, Yoshio Iguchi, Shigeki Kato, Kazumi Takahashi, Satoshi Eifuku, et al.
    • 学会等名
      日本神経科学学会
  • [備考] 【論文の解説】昆虫のにおい受容体を用いたほ乳類脳神経細胞の新たな活動操作技術の開発と…

    • URL

      https://www.fmu.ac.jp/home/molgenet/news-1086

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公開日: 2022-12-28  

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