研究実績の概要 |
本研究では,後部頭頂葉を選択的に評価できるオプティックフロー(optic flow, OF)刺激を用いた視覚誘発電位検査(visual evoked potential, VEP)により,一過性有酸素運動の強度(低/中強度)に対する後部頭頂葉機能感受性にエネルギー代謝能が関与するのかを検証する。 2022年度は,実験の趣旨に合意した整形外科的および神経学的疾患,視覚障害を有さない右利きの健常成人20名を対象とし,運動を行わずにVEP検査のみを行うコントロール条件,トレッドミル運動直後にVEP検査を行う低強度有酸素運動条件および中強度有酸素運動条件の3条件を実施した。また,後部頭頂葉機能とエネルギー代謝脳の関係を調査するため,各被検者の体組成を計測した. これまでに,体組成計にて測定した基礎代謝基準値(Basal Metabolism Standard,BMS)を厚生労働省による年齢・性別に応じた「日本人のBMS」で除した基礎代謝基準値比 (BMS ratio, BMSr)で中央値以上/未満に分類し,各被検者各条件のVEPから抽出したN170-P200頂点間潜時を比較した.その結果,BMSrが中央値未満の群では低強度有酸素運動後に比べ,中強度有酸素運動後のN170-P200頂点間潜時を認めたが,BMSrが中央値以上の群ではこのような傾向は認められなかった.このことから,代謝機能がより低い傾向にある者は,VEPのN170-P200頂点間潜時という神経生理学的レベルにおいても,また低/中強度であっても,その有酸素運動強度の影響を反映して後部頭頂葉における視覚処理に異なる影響を与えることが示唆された. 2023年度は,2022年度に取得したデータを用い,VEP成分と体組成指標や活動量との関連を検討した. 2024年度は,引き続き解析を継続するとともに成果作成・発表を行う予定である.
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