研究課題/領域番号 |
20K11230
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
田中 亮 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 准教授 (50454880)
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研究分担者 |
長谷川 正哉 県立広島大学, 保健福祉学部(三原キャンパス), 教授 (10382376)
田中 繁治 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 助教 (50817666)
井上 優 吉備国際大学, 保健福祉研究所, 準研究員 (90726697)
伊藤 秀幸 宝塚医療大学, 和歌山保健医療学部, 講師 (40883096)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 膝痛 |
研究実績の概要 |
本研究は、非薬物的介入を行っても効果が得られない難治性膝痛を有す高齢者の個人特性を解明することを目的としている。そのために、システマティックレビュー、基礎的研究、介入研究を計画していた。 システマティックレビューについては、集団教育、歩容修正、非接触・非対面での非薬物的介入が膝痛に及ぼす効果を調べ、その結果をまとめ、計3編の研究論文を国際誌に投稿した。集団教育に関するシステマティックレビューでは、個別化された指導がなくても、運動を含む集団教育は膝痛を有意に緩和させるというエビデンスを確認できた。歩容修正に関するシステマティックレビューでは、膝痛に及ぼす効果を支持するだけの質の高いエビデンスは確認できなかったが、足部に注目した歩容修正には臨床的に意味のある変化をもたらす可能性が示された。非接触・非対面での非薬物的介入に関するシステマティックレビューでは、身体活動を高めるような教育的介入によって、膝痛が緩和されるというエビデンスを確認できた。これら3編とは別に、膝痛の要因になりうる膝蓋大腿関節症の診断精度のシステマティックレビュー1編を国際誌に投稿し、こちらの研究論文はアクセプトされた。 基礎的研究については、新型コロナウィルス(COVID-19)の感染拡大に配慮し、2022年度に延期した。 介入研究については、2020年度に続き、2021年度も、膝痛を有す高齢者を対象にして、痛み教育、歩容修正、有酸素運動から構成される非薬物的介入プログラムを12週間実施した。複数の会場でプログラムを実施し、2021年度末までに50名以上の高齢者が参加した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
システマティックレビューについては、順調に進展している。1編の研究論文がアクセプトされたことや、集団教育、歩容修正、非接触・非対面での非薬物的介入に関するレビューの成果をまとめ、計3編、国際誌に投稿できたことは予定通りである。その一部は修正原稿を執筆中であり、2022年度初旬には再投稿できる見通しである。 基礎的研究の一つである歩容修正に関する筋生理学的および運動学的研究は、やや遅れている。2020年度と同様に、COVID-19が収束しない中、予定どおり実施できなかった。しかしながら、研究プロトコルは完成し、測定に必要な機器は準備できているため、2022年度は研究を実施できる予定である。 介入研究については、COVID-19感染予防に配慮しながら、2021年度も継続している。当初は2021年度中に80名の高齢者の研究参加を見込んでいたが、緊急事態宣言や外出自粛により、予定通りの研究参加が実現されなかった。そのような中にあっても、2020年度から参加者を着実に増やすことができており、2022年度末までに必要標本数の達成は見込めている。
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今後の研究の推進方策 |
システマティックレビューについては、順調に進展しているため、2021年度に引き続き、2022年度も人員を雇用し、投稿中の3編の論文のアクセプトを目指す。 基礎的研究については、研究参加者数を必要最小限とし、COVID-19感染予防に配慮しながら、データを収集する。データ収集にあたっては、学外から研究協力者を招き、筋電図や加速度計を使用する。また、筋生理学的および運動学的な解析も、研究協力者と共同で行う。解析結果を考察し、論文を執筆して2022年度中の投稿を目指す。 介入研究についても、COVID-19の状況をみながら、対象者を増やす。2022年度中に、非薬物的介入を行っても膝痛緩和が得られない高齢者を予測するためのルール(CPR:Clinical Prediction Rules)を作成するために必要な標本数に到達する見込みではある。しかしながら、作成したCPRの妥当性を検証するために必要な標本数は見込めないため、CPRの作成を2022年度の目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、研究論文の掲載費として予算を確保していたが、2021年度にアクセプトされた研究論文は1編しかなかった。また、国際学会に現地で参加するための費用を確保していたが、COVID-19により、海外に渡航する機会が得られなかった。 2022年度は、システマティックレビューの3編のアクセプトを目指している。アクセプトされた場合、可能な限りオープンアクセスを選択して、助成金から掲載料を支出する。2022年度も、国際学会の現地での参加が難しいことから、基礎的研究の実施に伴う人件費、および、データ収集・解析に必要な機器の購入に助成金の一部を充当する。介入研究にかかる経費(人件費や施設使用料など)を執行するために、2021年度に引き続き助成金を使用する。
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