超高齢化社会の我が国において,虚弱(フレイル)な高齢者が増えるなか加齢に伴う筋力低下(サルコペニア)は健康寿命の維持や医療経済的観点から重要な課題である.一方で,間質性肺疾患においても高齢者同様,サルコペニアが問題視されてきている.しかし,間質性肺疾患におけるフレイルが骨格筋機能障害に及ぼす影響に関する報告は少なく,明らかとなっていない.間質性肺疾患におけるフレイル状態は,呼吸困難の重症度の独立因子として強く関連していることを示した報告はあるが,骨格筋機能障害との関連性について検討した報告はない.したがって,超高齢化社会にある本邦において,医療経済的観点からもサルコペニアは最重要課題であるとともに,間質性肺疾患においてもサルコペニアやフレイルへの対策は重要である.そこで,神経筋電気刺激療法は,経皮的な低周波電気刺激によって筋を他動的に収縮させることで筋力の改善や筋肥大を図る方法であり,すでに慢性閉塞性肺疾患への神経筋電気刺激療法の効果と安全性が報告されている.神経筋電気刺激療法は,総RNA含有量の大幅な増加,骨格筋における代謝効率の改善,TypeⅡ繊維および骨格筋の繊維サイズを増加させるとされている.さらに,不活動に伴う廃用性萎縮に対して,特に有効性を示すことが明らかとなっている.しかし,未だ間質性肺疾患を対象とした神経筋電気刺激療法の効果を検討した報告はなく,フレイルの状態にある間質性肺疾患に対する有効性の検討を行う臨床的意義は大きいものと考えられる.今回の検討の中心である骨格筋筋力の指標である握力や大腿四頭筋筋力は,プログラム開始前後で大きく改善を認めた.全身の筋力を反映する指標である握力は,平均24.5kgから26.4㎏まで改善し,大腿四頭筋筋力は,平均24.9kgfから25.4kgfと握力と同様に改善を認めた.しかし,6MWDは平均417mから350mと歩行距離の短縮を認めた.
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