研究課題/領域番号 |
20K11244
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
中西 淳 順天堂大学, 保健医療学部, 教授 (20255706)
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研究分担者 |
福永 一星 順天堂大学, 保健医療学部, 助教 (80861129)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 脳卒中 / リハビリテーション / MR撮像プロトコール / 神経組織再構築 / 可視化 |
研究実績の概要 |
最初にリハビリテーション科と研究内容を検討し、脳卒中片麻痺患者の入院から退院までの診療過程を確認した。研究目的であるリハビリテーション介入による神経組織再構築機序について、リハビリ専門医から患者毎に作業療法が組まれるので、患者の運動機能などを含めたQOLは入退院日の患者NIHSSで評価することを提案された。脳卒中片麻痺患者は救急外来受診し、神経内科の診察、検査を受ける。その結果で静注血栓溶解(rt-PA)療法の適応を判断される。発症より4.5時間以内に施行する。しかし、片麻痺の原因は様々であり、神経症状(片麻痺、筋力低下、構音障害など)を主訴に脳梗塞が原因でMR拡散強調像において錐体路に病変が局在するBAD様病変に対して、DKIやNODDIなどのMR撮像プロトコールを追加していく方針を神経内科医と協議した。コロナ渦中の研究開始は様々な制約が生じ、研究頓坐となり、症例収集に危機的な状況である。まず、当直時間帯ではDKI撮像ができず、日中勤務時間帯で撮像する方向となった。さらにDKI撮像できる機器も臨床で汎用され、救急患者を優先的に施行できる状況ではなかった。この中で2020年7月の研究早々にDKIが撮像できた症例では対側錐体路に微小出血があり、患側病変部とのDKI値が同程度なり、微細な構造変化を示唆するDKI値に関して、以下の条件を追加した。①典型的なBAD様である。②対側錐体路に病変がない。③T2*で大脳基底核領域に微小出血がないとしていた。しかし、これらの条件下では症例収集が難しく、②と③を外し今年度から症例を収集している。昨年度救急患者で片麻痺患者60数名を再調査したが、月に1名の頻度で6名が前述条件の①から③を満たす症例が確認できた。日勤帯での救急患者の取り扱いなど放射線部との連携を図り、今年度の経験を踏まえじ次年度10例を目標とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度はコロナ禍となり、医療従事者の病院内への入場規制や登院制約あり、救急外来の受け入れにも支障が生じた。研究計画したコロナ禍以前の計画を変更せざる追えない現況である。今後も予断を許さない状態は変わりなく、救急外来が機能しない非常事態も想定していく必要がある。一方、予定していた撮像プロトコールにも見直しが必要である。脳卒中片麻痺患者とは言え、その原因には脳出血や多くの微小出血が含まれていることがあり、DKI値対する影響が懸念される。また、既往歴に脳梗塞があり白質病変が存在し、事実、健側錐体路をコントロール群にする方法には限界である。DKI値コントロールの設定にも再考が必要である。現在の状況では日中診療時間内に救急である片麻痺患者をDKI撮像可能な装置で追加撮像することは極めて困難であることが想定される。DKI撮像時間が6~8分程度であるが、検査スループットを円滑にして、患者治療への不安を招くことの無い体制作りとその要望に応える医療スタッフの育成が必要不可欠で、撮像アルゴリズムを作成し現在待機中である。
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今後の研究の推進方策 |
患者評価に際して、リハビリ専門医からいくつか指摘を受けた。①入退院時のNIHSSの評価だけでは、患者病状把握が乏しいのではないか。②退院後の経過観察に該当患者が追従できない。③予後予測評価に社会的復帰の要素が含まれていないこと。対応策として、①NIHSS評価に加えてmRS(modified Rankin Scale)を加える。②について、退院時に当院での検査を予約する。③回復リハビリにおける課題や改善点も評価に加える。 次に、症例に関して片麻痺患者だけではなく、急性期脳梗塞疑われ、検査中に拡散強調像で異常が検出できた症例を対象にDKI撮像プロトコールを広げていく必要性がある。急性期脳梗塞で片麻痺を含む神経症状が生じた患者も対象とすることで、錐体路だけに限局する病変だけでなく、中心前回、放線冠、脳幹部も含め皮質脊髄路に関するDKIに関して症例数を増やす。この場合、リハビリによる評価をNIHSSだけでなく、リハビリ専門医からも指摘されたADL障害を考慮しmRS、stroke impairment assessment set(SIAS)などの評価も併用することも検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はデータを整理するために物品を購入したが、要件を満たす症例が収集できず、人件費や謝金の支出もなく、解析などもできなかった。故に学会発表には至らなかった。次年度は症例を確保するために関係する部門と連携を密に、目標とする症例数を確保したい。次年度上半期で症例が確保できなければ、要件の見直しを検討する。下半期では経験した症例のデータ管理を行い、学会発表の準備としたい。
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