研究課題/領域番号 |
20K11245
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
竹川 徹 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (80384981)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 体外衝撃波療法 / 脳卒中 / 筋痙縮 / リハビリテーション |
研究実績の概要 |
脳卒中後の上下肢痙縮による運動障害をはじめとした様々な障害は、大きな社会的問題である。近年ボツリヌス毒素治療が普及しつつあるが、体外衝撃波による痙縮治療はわが国では普及していない。一般的に、体外衝撃波には、疼痛軽減・鎮痛効果、筋緊張軽減効果等があり、低侵襲かつ少ない副作用による痙縮軽減効果が期待され、実際に海外では上下肢痙縮へ体外衝撃波が徐々に適用されつつあるが、ボツリヌス毒素治療との併用の報告はない。脳卒中後患者への有意な痙縮軽減効果が明らかとなれば、体外衝撃波療法は非侵襲的な痙縮治療の一つとして確立され、ボツリヌス毒素等の痙縮治療に新たな展望が拓けると考える。 長年にわたって上下肢痙縮へのボツリヌス毒素治療に関する研究、痙縮に関する研究、脳卒中後の片麻痺に対する経頭蓋磁気刺激治療に関する研究に従事してきた。脳卒中後の痙縮に対する豊富な治療経験を有する。 上下肢痙縮に対するボツリヌス毒素治療に関する研究活動では、脳卒中後の上肢麻痺を有し、Brunnstrom stage 3と重度手指麻痺の80名を対象とし、A型ボツリヌス毒素注射と、作業療法による自主トレーニング指導とを併用して、上肢能動的機能の改善を示した。(Takekawa T, et al. Int J Rehabil Res 2012; 35: 146-52.) また、190名を対象とし、6ヵ月間と長期にわたり他動的機能と能動的機能変化を調査し、上肢の痙縮は有意に低下し、特に上肢近位部におけるA型ボツリヌス毒素治療の長期間の効果を示した。(Takekawa T, et al. Acta Neurol Belg. 2013; 113: 469-75.)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
第三病院内での医療器機適応外使用申請をし、脳卒中後の痙縮に対する器機の使用許可を得た。 器機(振動ヘッド付き空気圧式マッサージ器、Stotz Medical AG社製(スイス)、インテレクト RPW モバイル(医療機器承認番号:23000BZX00228000))1台を購入した。 脳卒中後の痙縮に伴う疼痛に対する治療プロトコールを作成した。このプロトコールは、外来通院中の患者の痙縮に伴う疼痛に治療行為の一環として本器機を適用し、週1回通院時に1部位につき2000発、合計6000発を適用する。器機の適用は4回実施する。出力は、適用部位に対してVAS:5~6/10程度とする。体外衝撃波装置の適用は、四肢痙縮筋のみとし、禁忌とされている神経根および脊髄近傍への適用は禁止する。 治療前と、毎回の治療後に通常診療として行われている簡単なリハビリテーション評価を実施するというものである。主要評価項目(Primary endpoint)は、痙縮肢のModified Ashworth Scale (MAS) 、副次的評価項目(Secondary endpoint)は、上肢機能としてDisability Assessment Scale(DAS)、疼痛としてVisual Analogue Scale (VAS)、安全性評価項目は、治療後の疼痛、治療部位の腫脹、治療部位の紅斑等の有無である。 作成したプロトコールを参考にして、試行的にまず3名の痙縮を有しそれに伴う疼痛をある患者に対して、本装置による体外衝撃波治療を実施した。関節可動域の拡大等の比較的に良好な結果を得ることができている。
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今後の研究の推進方策 |
現在施行している患者に対する結果を、1~数名の後方視的な邦文の症例報告として日本国内の学術雑誌へ投稿、論文化する予定である。 これと平行して、脳卒中後の痙縮がありそれに伴う疼痛を有するリハビリテーション科の外来通院患者に対して、疼痛に対する診療の一環として引き続き本器機を適用していく方針である。週1回通院時に1部位につき2000発、合計6000発を適用する。器機の使用適用は4回とする。出力は、適用部位に対してVAS:5~6/10程度とする。体外衝撃波装置の適用は、四肢痙縮筋のみとし、禁忌とされている神経根および脊髄近傍への適用は禁止する。 治療前と、毎回の治療後に通常診療として行われている簡単なリハビリテーション評価を実施する予定である。主要評価項目(Primary endpoint)は、痙縮肢のModified Ashworth Scale (MAS) 、副次的評価項目(Secondary endpoint)は、上肢機能としてDisability Assessment Scale(DAS)、疼痛としてVisual Analogue Scale (VAS)、安全性評価項目は、治療後の疼痛、治療部位の腫脹、治療部位の紅斑等の有無である。 合計20名程度の患者に対して器機の適用を行いたいと考えている。 全ての患者のデータ集取が完了した後に、後方視的研究として倫理審査を申請する予定である。その後、まとまった結果を日本リハビリテーション医学会学術集会等で成果発表し、権威ある英文学術雑誌へ投稿、論文化へとつなげていく予定である。
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