研究実績の概要 |
本計画では、これまでの実験により遅発性筋痛の機械痛覚過敏にTRPA1が関与する一方で、TRPV2が関与しないことを実証し、さらに近年機械受容チャネルとして機能することが報告されたTmem120A(Beaulieu-Laroche et al., 2020)が遅発性筋痛の筋においても発現増大することを明らかにし、現在論文投稿中である。一方、後根神経節においてTmem120Aの増大を検出することができなかったため、免疫組織化学的にTmem120Aの発現を調べたところ、後根神経節および骨格筋で一部発現が認められた。現在、後根神経節のうち骨格筋を支配する神経節細胞および、骨格筋組織におけるTmem120Aの発現レベルが遅発性筋痛において増大するか定量解析中である。また、炎症筋で増大することを見出しているTmem120B (Tmem120Aのホモログ)が、遅発性筋痛において発現増大するか調べたところ変化は認められなかった。遅発性筋痛はほとんど炎症像を呈さない(Hayashi et al., 2017)ことから、今後はTmem120Bがどのように炎症機構に関与するか検証する必要がある。さらに、遅発性筋痛の筋組織に対象に、変動遺伝子の網羅的解析を行ったところ、これまで遅発性筋痛をはじめ筋病態への関与が全く見いだされていなかったDusp (Dual Specificity Phosphatase)-15遺伝子が、運動負荷筋で無処置筋に比べて有意に発現増大していることが分かった。現在、本遺伝子の筋組織および筋支配神経における発現増大について調べているとこである。今回の結果から、この発現局在や疼痛行動との関連に関する解析といった発展的な研究の足掛かりを得ることができた。
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