研究課題/領域番号 |
20K11260
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
大森 斉 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (80213875)
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研究分担者 |
國安 弘基 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (00253055)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | がん性心筋悪液質 / ミトコンドリア / 心筋分化 / 酸化ストレス / ミトコンドリアDNA |
研究実績の概要 |
がん性心臓悪液質は進行癌患者の40-80%に認められ、QOL低下、癌治療の制限、生命予後の悪化を引き起こす。がん性悪液質は、骨格筋ではミトコンドリア機能不全を起こし、酸化ストレス(ROS)の増加をもたらす。心臓では、心筋萎縮、リモデリング、機能不全が生じるが多くは化学療法による修飾が加わっており、未治療の担癌モデルでの心臓悪液質の詳細な検討は少ない。このため、ラット心筋芽細胞株H9c2とラット大腸癌細胞株RCN-9を用いて、悪液質における心筋細胞のミトコンドリア変化を評価した。Cardiomyoblastと分化誘導したcardiomyotubeを、RCN-9癌細胞上清添加下で培養すると、cardiomyoblastではミトコンドリア量は増加したが、ミトコンドリア膜電位、ミトコンドリア酸化ストレスは変化しなかった。一方で、cardiomyotubeでは、ミトコンドリア量は減少し、ミトコンドリア膜電位変化とミトコンドリア酸化ストレスの増加はみられなかった。ミトファジーはcardiomyoblastで抑制され、cardiomyotubeで促進された。RCN-9細胞の培養上清中にはHMGB1のような炎症性サイトカインとともにミトコンドリアDNA断片が検出された。われわれは、低酸素環境においてcardiomyotubeではミトコンドリア膜電位の上昇、ミトコンドリア酸化ストレスの増加が惹起されることを見出しており、担癌状態では低酸素環境とは異なる機序のミトコンドリア障害が生じることが示唆され、それに癌細胞由来ミトコンドリアDNAが関与する可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
培養系において、癌細胞由来液性因子と心筋ミトコンドリア障害の関連を明らかにすることができ、それに癌細胞由来ミトコンドリアDNAが関与する可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
心筋障害におけるミトコンドリアDNAの配列特異性およびミトコンドリア障害の発生機序について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
残額については、次年度消耗品購入に使用する。
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