研究課題/領域番号 |
20K11265
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
真壁 寿 順天堂大学, 保健医療学部, 教授 (60363743)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 視覚情報 / 歩行 / ストライド / 変動 / スケーリング指数 / 脳波筋電図コヒーレンス |
研究実績の概要 |
昨年度は若年成人を対象に視覚情報を断続的に遮断した時に、歩行パラメータ(歩行速度、歩行率、ステップ長)、脳波筋電図コヒーレンスに与える影響を検討してきた。今年度は対象を地域在住高齢者に変え、昨年と同様な解析を行い、年齢による歩行パラメータ(歩行速度、歩行率、ステップ長)、脳波筋電図コヒーレンスの違いを明らかにした。対象は12名の地域在住高齢者(平均年齢70.6歳)とした。歩行時の視覚情報の遮断条件は、以下の3条件とした。視覚情報の遮断なし(シャッターゴーグル無し)、視覚情報の遮断率30%(duty ratio 30%、以下DR30)、視覚情報の遮断率70%(duty ratio 70%、以下DR70)とした。これらの条件下において、1周20mの8字歩行路を快適歩行速度で10分間の歩行を行い、その際の歩行パラメータ(歩行速度、歩行率、ステップ長)、脳波筋電図コヒーレンスの値を比較検討した。筋電図は右下肢前脛骨筋(以下TA)、脳波はCz部位から導出した。脳波筋電図コヒーレンス(Cz-TA Coherence、以下Cz-TA Coh)は、Welch法によりθ帯域(4-8Hz)、α帯域(8-13Hz)、β帯域(13-30Hz)、γ帯域(30-40Hz)において求めた。その結果、視覚情報の断続的遮断無しに比べ、DR30及びDR70の視覚情報の断続的な遮断において、歩行のパラメータ(歩行速度、歩行率、ステップ長)は有意な変化はなかった。一方、視覚情報の断続的遮断無しに比べ、DR30及びDR70の視覚情報の断続的な遮断時において、β帯域のCz-TA Cohは有意な増加が認められた。この結果は、若年成人の結果と相反する結果となった。高齢者は、視覚情報が断続的に遮断されることによって、脳と下肢筋の連絡をより強め、歩行をコントロールする戦略で歩行の安定化を得て歩行することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は地域在住高齢者12名の測定を行うことができ、昨年度測定解析した若年成人との比較も行うことができた。若年成人は視覚情報が断続的に遮断された状態では、脳と下肢筋の連絡情報を弱めた状態で歩行を行うが、地域在住高齢者は脳と下肢筋の連絡情報を強めた状態で歩行を行うことが明らかになった。これらの結果を昨年開催された国際学会(ISB2021)に発表することができた。今後は、加速度信号から歩行のストライドの変動解析を進める予定です。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画通り、高齢者及び若年成人のデータを収集し、視覚情報の断続的な遮断に鋭敏に反応する歩行パラメータを同定し、年齢による差を明らかにする。また、視覚情報の断続的な遮断に鋭敏に反応する脳波筋電図コヒーレンスの周波数帯域を同定し,その最大コヒーレンス値の年齢による差を明らかにする。加えて、下肢、体幹からの加速度信号から歩行のストライドの変動解析を行い、視覚情報の断続的な遮断がストライド変動に及ぼす影響、その年齢による差を明らかにしていく予定です。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス感染予防の観点から当初予定した被験者数の測定ができなかった。また、国際学会への発表がオンライン開催となり、渡航費を支出する必要が無くなった。今後は被験者数を増やし、国際学会への発表、論文投稿などを計画する予定です。
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