研究課題/領域番号 |
20K11265
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
真壁 寿 順天堂大学, 保健医療学部, 教授 (60363743)
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研究分担者 |
鈴木 栄三郎 山形県立保健医療大学, 保健医療学部, 助教 (20823298)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 歩行 / ストライドインターバル / スケーリング指数 / 近似エントロピー / 視覚情報 / 年齢 |
研究実績の概要 |
過去2年間、歩行パラメータは、若年成人と地域在住高齢者を対象に歩行速度、歩行率、ステップ長を中心に行ってきた。今年度は評価パラメータを拡張し、ストライドインターバルの非線形性に注目し、若年成人と地域在住高齢者を対象にストライドインターバルのスケーリング指数α(Scaling Exponent α、以下SEα)と近似エントロピー(Approximate Entropy、以下ApEn)を評価した。対象は20名の若年成人(平均年齢21歳)と20名の地域在住高齢者(平均年齢71歳)とした。歩行時の視覚情報の遮断条件は、以下の3条件とした。視覚情報の遮断なし、視覚情報の遮断率30%(duty ratio 30%、以下DR30)、視覚情報の遮断率70%(duty ratio 70%、以下DR70)とした。これらの条件下において、1周20mの8字歩行路を快適歩行速度で10分間の歩行を行い、その際のストライドインターバルの時系列データに対して、SEαとApEnを求め群間及び群内で比較検討した。ストライドインターバルは、利き足(右)踵に貼付した加速度センサーの垂直成分のピーク間時間にて算出した。600ポイントの時系列データを対象に、トレンド除去法(Detrended Fluctuation Analysis、以下DFA)にてSEαを求めた。ApEnは(m=2、N=2000、r=0.2SDに設定)はMatLabR2022aにて計算した。その結果、SEαはどの視覚情報の遮断条件においても、地域在住高齢者において有意に減少していた。また、両群においてSEαは視覚情報の遮断条件による群内の差はなかった。ApEnはどの視覚情報の遮断条件においても、群間及び群内の有意な差はみられなかった。これらの結果より、SEαは視覚情報の遮断条件に依らず、地域在住高齢者で有意に低下することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は歩行のストライドインターバルの非線形性に注目し、ストライドインターバルのスケーリング指数α(SEα)と近似エントロピー(ApEn)を求め、若年成人と地域在住高齢者で比較検討した。SEαは視覚情報の遮断条件に依らず、年齢により有意に低下することが明らかになった。過去2年間の歩行パラメータの結果と今回の結果より、両群の年齢による差はSEαのみに見出すことができたが、視覚情報の遮断条件に反応する歩行パラメータは見出すことが出来なかった。一方、視覚情報の遮断条件に反応するパラメータは、唯一、β帯域の脳波筋電図コヒーレンス(Cz-TA Coh)においてみられ、遮断率30%と70%において地域在住高齢者で増加する傾向にあった。解析手法も含め、今後さらなる検討を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの研究成果として、若年成人と地域在住高齢者の年齢による歩行パラメータの差はSEαのみに現れ、他の歩行パラメータに出現しないことが明らかになった。また、視覚情報の断続的な遮断に鋭敏に反応するパラメータは、β帯域の脳波筋電図コヒーレンス(Cz-TA Coh)であり、遮断率30%と70%において地域在住高齢者で増加する傾向にあった。解析手法も含め、今後さらなる検討を行う予定である。また、若年成人と地域在住高齢者を対象に、β帯域の脳波筋電図コヒーレンスが、他のどのような動作、姿勢において反応するかを検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
被験者謝礼、旅費支出の残である。研究期間を1年延長し、さらなるデータ解析を行う。その際の消耗品に使用する予定である。
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