研究実績の概要 |
昨年度まで視覚情報の断続的な遮断が、歩行パラメータ(歩行速度、歩行率、ステップ長)に与える影響を若年成人と地域在住高齢者を対象に検討してきた。その結果、両群とも歩行パラメータは、視覚情報の断続的な遮断の影響を受けず、唯一影響を受けるのはβ帯域の脳波筋電図コヒーレンスであった。そこで、今年度は立位時の閉眼が脳波筋電図コヒーレンス(EEG-EMG Coh)と脳波間コヒーレンス(EEG-EEG Coh)に及ぼす影響を検討した。対象は神経学的及び整形外科的疾患を有しない若年成人11名とした。脳波の測定は国際20-10法に従い左前頭部(Fp1)、中心部(Cz)、左頭頂部(P3)とした。下肢筋電図は右前脛骨筋(TA)とした。立位は両脚立位、片脚立位として開眼と閉眼の2条件にて脳波、筋電図を測定した。コヒーレンス解析はWelch法を用い、Window幅256 points、overlap 128 points、分解能0.78 Hzで行った。両脚立位、片脚立位の測定は30秒間とし、そのうちの安定している20秒間のデータを解析対象とした。θ帯域及びβ帯域のEEG-EEG Coh(Cz-Fp1 Coh, Cz-P3 Coh)とEEG-EMG Coh(Cz-TA Coh)を開閉限で比較検討した。その結果、Cz-Fp1 Cohは閉眼時にθ帯域とβ帯域において両脚立位と片脚立位で有意に増加した。Cz-P3 Cohは閉眼時にθ帯域において片脚立位で有意に増加した。一方、Cz-TA Cohは両脚立位と片脚立位において閉眼による有意な変化がなかった。これらの結果より、閉眼により皮質間の結びつきが強まり、特にθ帯域のCz-Fp1 CohとCz-P3 Cohが上昇したと考えられた。また、閉眼時の姿勢制御は、EEG-EMG Cohの増加よりもEEG-EEG Cohの増加による影響が大きいことが示唆された。
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