研究課題/領域番号 |
20K11268
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
菅原 仁 東京工科大学, 医療保健学部, 教授 (90613290)
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研究分担者 |
只野 ちがや 東邦大学, 医学部, 講師 (40261094)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 遠心性収縮 / ダウンヒル / 低強度 / ヒールレイズテスト |
研究実績の概要 |
下り坂歩行は大腿四頭筋の遠心性収縮による速筋線維活動を誘発しやすい運動であり、心臓循環系への負担が比較的少ないことから、高齢者や低体力者の下肢筋力の維持、増強に有効であると思われる。そこで、歩行速度とダウンヒル勾配との関係を明らかにする実験を行った。歩行(4km/時)を水平、-6%勾配、-12%勾配の各条件で試行した。歩行時の平均心拍数は84拍/分で水平に対して下り歩行でやや低値を示した。収縮期血圧と拡張期血圧には試行による変化はなかった。下り坂歩行(-6%勾配、-12%勾配)において、大腿四頭筋の活動に増加が認められており、軽い-6%勾配でもトレーニング効果が得られる可能性が示唆された。そこで、50歳以降の中年者に対して、-6%勾配、4km/時で短期ダウンヒルト歩行レーニングを実施した。トレーニング期間は3週間とし、3回/週の頻度、1週目10分間歩行、2週目20分間歩行、3週目30分間歩行とした。その結果、大腿四頭筋の最大筋力とカーフレイズテストによる力発揮率(RFD)の増大傾向が認められた。短期間トレーニングのため、神経系の改善による効果と思われ、速筋線維への動員が促されたと推測された。 一方、立位での遠心性収縮(ヒールドロップ)と求心性収縮(ヒールレイズ)運動時の神経筋への影響を誘発筋電図(H波)を使って評価した。低強度運動中のヒラメ筋と腓腹筋のH波は、安静立位と比較して、求心性収縮運動で増大、遠心性収縮運動で減少する傾向にあった。このH波の増減は、運動単位活動の動員パターンの変調によるものと考えられた。ダウンヒル歩行トレーニングにみられるヒールレイズテストのRFD増大と関連していると推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
軽い勾配(-6%)によるダウンヒル歩行による筋活動変化(増大)を明らかにすることができた。また、中年に対する短期間のダウンヒル歩行トレーニングを実施することができた。その結果、膝伸展の最大筋力とヒールレイズテストのRFD増大効果を認めることができた。しかし、壮年、中年、初老の年齢による違いや運動習慣による影響を含めた研究ができていない。これについては、COVID19により、外部の被験者に協力を得ることが困難であったためである。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、令和3年度に実施したダウンヒル歩行トレーニングの効果検証を継続して行う。年齢層を広げ、年齢と運動習慣の違いによるトレーニングの特異的な影響を確認する。また、皮膚冷刺激の付加によりダウンヒル歩行トレーニングとの相乗効果が得られる可能性があり、ダウンヒル歩行トレーニングとあわせて皮膚冷刺激付加したトレーニングを行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
被験者謝金、学会旅費として支出を予定していたが、本年度はCOVID19のため、予定していた歩行トレーニングが行えず被験者謝金が発生しなかった。また、本年度の学術大会はオンラインで開催されたため旅費が必要なかった。次年度に予定している被験者謝金、被験者保険代金として使用する予定である。
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