研究課題/領域番号 |
20K11289
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研究機関 | 文京学院大学 |
研究代表者 |
上田 泰久 文京学院大学, 保健医療技術学部, 准教授 (10458549)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 頭頸部 / 疼痛 / 運動解析 / 動態解析 |
研究実績の概要 |
本研究では、頭頸部の病態運動を引き起こす要因を多角的に検証し、組織損傷の発生メカニズムを明らかにすることを目的とする。今年度は、頭頸部の病態運動を引き起こす要因として脊柱アライメントに着目し、脊柱計測分析器(以下、スパイナルマウス)を用いた過去の計測データから詳細な検証を行った。対象は健常な若年男性28名と高齢男性24名で、測定肢位は端座位とした。頭頸部の運動は中間位・屈曲位・伸展位とし、スパイナルマウスを用いて脊柱アライメントを比較した。結果は、座位姿勢における頭頸部の屈曲・伸展運動では、胸椎のアライメントまでが変化し、腰椎・仙骨のアライメントまでは変化しないことが明らかになった。この傾向は若年者だけでなく、高齢者でも同様に認められた。頭頸部の屈曲・伸展運動には、特に上位胸椎のアライメントが変化することが重要であることが示唆された。上位胸椎のアライメントは、頭頸部の病態運動を助長させる一つの要因になると考えられた。さらに、生体組織硬度計と超音波方式3次元動作解析システムを用いた過去の計測データから、軟部組織と頸部の可動域の関係について詳細な検証も行った。対象は健常な成人男性20名とし、測定肢位は端座位とした。上肢・上肢帯アライメントは両上肢下垂・両上肢免荷・左上肢免荷とし、頸部の筋硬度と可動域を測定した。結果は、頸部の筋硬度は両上肢免荷で左右僧帽筋、左上肢免荷で左僧帽筋が有意に低下した。頸部の可動域は両上肢免荷で伸展・回旋・側屈,左上肢免荷で左回旋・右側屈の可動域が有意に増加した。上肢・上肢帯アライメントに伴う頸部の筋硬度は可動域を変化させる。そのため頸部の筋硬度は、頭頸部の病態運動を助長させる一つの要因になると考えられた。新たな研究課題である超音波診断装置を用いた頭頸部の軟部組織の動態に関する研究は、引き続き継続して検証している段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度も新型コロナウイルス感染症が収束しない状況下で制約が多く、新たな研究課題の計測が思うように進まなかった。そのため、過去の計測データを詳細に解析し、現在までの知見について整理することができた。新たな研究課題である超音波診断装置を用いた頭頸部の軟部組織の動態に関する研究については、超音波診断装置のプローブ圧を計測できるアタッチメントを共同開発し、既存の滑走性を評価できるソフトウエアを用いて解析していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、新型コロナウイルス感染症の感染予防対策を実施した上で、新たな研究課題に関する計測を継続して実施する。今後の研究推進方策としては、後頸部の僧帽筋と肩甲挙筋(筋間に副神経が走行)、頭半棘筋と下頭斜筋(筋間に大後頭神経が走行)の選択的収縮による滑走性の違いについて、定性的・定量的データを収集して検証していく。データ解析後は学会発表と学術論文へ投稿を予定している。この後頸部の筋の選択的収縮による滑走性の違いが明らかになれば、筋を含めた軟部組織の滑走不全に対する予防的な「患者教育(セルフケア指導)」や治療的な「運動療法」に応用できるため、臨床的にも大きな意義があると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、超音波診断装置のプローブ圧センサーを計上していた。こちらは概ね申請した予算額で購入できた。2021年度は、新たな研究課題を遂行するために、被験者の謝礼・学会発表および論文投稿に関する諸費用として使用計画を立てている。
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