研究課題
リハビリテーションの一つである運動療法は脳損傷後の運動機能の回復を目的として行われる。運動療法は、脳損傷により破綻した脳から骨格筋の間の神経ネットワークを再構築すると考えられている。しかしながら、運動療法が運動機能の改善をもたらすメカニズムは十分に理解されていない。当該研究は、脳損傷後の運動と運動機能の回復の作用機序を解明することを目的とし、運動による運動機能の回復と神経ネットワークの修飾の連関性、そして運動により特異的に分泌される因子と運動機能の回復の関連性についてモデル動物を用いて検証する。そして、これらモデル動物での検証結果をヒト脳梗塞患者を対象に運動機能を評価し、基礎と臨床との事象の相互性も検証する。左大脳皮質を損傷させた脳損傷モデルマウスに対して運動療法として中等度の運動を5回/週、4週間実施した。中等度の運動の規定は、トレッドミル運動としその様子を酸素摂取量、二酸化炭素排出量、血中乳酸値で決定した。4週間の運動療法後、マウスのトレッドミル上の歩行を3次元動作分析にて解析を行なった。その結果、足関節の底背屈の動きに特徴を見出すことができた。この運動を生じている骨格筋に対して生化学的評価を行なった。その結果、神経筋接合部に関するタンパク質に変化が生じていることが分かった。一方、運動に特異的な因子(骨格筋からの分泌タンパク質)については現時点でも同定することができていない。今後は、中枢神経―末梢神経―効果器の連関について詳細に調べるとともに、この現象に対して疾患患者における運動についても運動学的に評価を実施する予定である。
4: 遅れている
令和4年度は、前年度までで明らかになったモデル動物を対象とした研究成果について、論文として研究成果を発表した。現在、動物実験においては、中枢神経―末梢神経―効果器の連関について、特に効果器に着目した検証を行なっているが、本研究テーマとして着目している特異的因子の候補を挙げられていないのが現状である。一方で、動物実験で明らかになった現象に対して人を対象として検証する準備(倫理審査の承認、撮影用の機器備品)は整ったが、実際に健常高齢者と患者のリクルートができていないため、遅れている状況である。
モデル動物の研究では、脳損傷後の効果器である骨格筋の変化についてより詳細に検証を行う予定である。そして、骨格筋からの分泌タンパク質の動態と運動機能の回復についても検証を行う予定である。また、人を対象とした研究では、モデル動物で明らかとなった足関節に着目して、健常高齢者と脳損傷患者との運動の変化を比較検討を行う予定である。
当該年度は、これまでに動物実験で見出した研究成果を論文として発表した際にかかった経費が主な支出であった。それ以外の状況としては、動物実験で用いる消耗品等の支出減少、予定していた学会への参加ができなかったこと、人を対象とした研究の人件費が発生しなかったことが残金発生の理由である。次年度は、脳損傷モデル動物に対する運動療法の関連因子を探索するために使用する各種試薬等の消耗品、動物実験で得られた知見をヒトへ応用できるか否か検証するため被験者協力としての謝礼金、国内学会のみではなく国際学会へ成果発表としての参加費等で支出を予定する。
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