研究課題
悪液質に対する治療戦略としては,原疾患に由来する慢性炎症に対する薬理的介入に加え,栄養療法および運動療法を含めた包括的な対応が必要とされる。特に,より早期に運動療法介入を開始することで,悪液質に伴う身体機能やADL能力低下を予防・改善できる可能性が示唆されている。しかし,臨床で遭遇する慢性疾患患者の中には,原疾患そのものの特異的な病態や二次的な廃用症候群,疾病の急性期や心循環器系の疾患を合併しているなどの理由で,積極的な身体運動を伴う運動療法を実施することが困難なケースも多く存在し,その代償となる治療法の早期開発が急務となっている。そこで本研究課題では,筋構成タンパク質の合成を促す温熱刺激と,慢性炎症やインスリン抵抗性を抑えるビタミンD投与を組み合わせた治療介入が,タンパク質の合成能・分解能とエネルギー代謝異常を相加的に改善することで,より効果的かつ効率的に悪液質に由来する骨格筋機能低下を改善するという仮説を立証することを目的としている。2023年度は,マウス大腸癌由来細胞株と共培養することで癌性悪液質を惹起したC2C12筋管細胞および癌性悪液質の病因として重要な役割を果たすグルココルチコイドの投与によって萎縮が生じるC2C12筋管細胞を用いて,温熱刺激またはビタミンD投与が悪液質に伴う骨格筋萎縮の進行過程に及ぼす影響とその作用機序について検討した。その結果,(1)温熱刺激を行うと,グルココルチコイド受容体およびフォークヘッド型転写因子の核移行は阻害され,筋萎縮関連遺伝子マーカーの発現増加や萎縮が抑制できること,(2)ビタミンD投与を行うと,グルココルチコイド受容体の核移行は阻害されないが,フォークヘッド型転写因子の核移行は阻害され,筋萎縮関連遺伝子マーカーの発現増加や萎縮が抑制できること,(3)これらの抑制効果はAkt阻害剤によってキャンセルされることを明らかにした。
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Journal of Sports Science and Medicine
巻: 22 ページ: 626-636
10.52082/jssm.2023.626
https://nfu-kg.n-fukushi.ac.jp/nfuhp/KgApp?kyoinId=ymdbgdgeggy