水中運動は関節痛を有する高齢者の有酸素能力を向上させるなど健康維持増進方法として近年注目されている一方、水中運動の呼吸器疾患患者への応用性や認知機能に及ぼす影響については明らかではない。そこで水中運動時の呼吸機能関連指標や脳血流動態の解析からその生理学的応答について解析した。 研究課題を課題1(観察研究):水中運動が成人男性の呼吸・認知機能に与える影響、課題2(介入研究):12週間の水中運動が高齢者の呼吸・認知機能に与える影響に分けて検討を進めてきたが、新型コロナウィルス感染症蔓延の影響は甚大であり、呼吸機能測定や高齢者への介入に困難な状況が継続したため、最終的に課題1に注力することとなった。そこで、呼吸および脳・認知機能には加齢性変化も認められるため、健常若年者と健常中高年者を対象に測定を行った。 剣状突起以上の浸水位での呼吸抵抗値の増加や、中立水温水中運動時の呼吸数増加、或いは一呼吸あたりの吸気時間短縮と吸気フロー増加による運動強度依存性の換気への影響、背外側一部における中強度運動での酸化ヘモグロビン濃度上昇から運動中の実行または注意制御との関連性が示唆されたことなどの結果を得た。 さらに、2023年度では肺気量位(空気を肺にどの程度含めた状態で呼吸をしているか)に注目して測定を開始した。 これにより、陸上運動とは異なる水中運動の運動負荷特性を捉えることができ、呼吸器疾患患者や、認知機能障害患者へのに対する水中運動の応用性や運動処方時の留意点に新たな知見を加えることができた。
|